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放課後、中村は “1年で同じクラスだったヤツらとカラオケ行くから一緒に帰れないわ” と私に話して教室を出ていった。


外は雨。


傘を持ってくるのを忘れた私は、濡れて帰るしか選択肢がなくて外に出たくない。


スマホで天気予報をみたら、夜には雨がやむ予報になっていて、教室で時間を潰してから帰ることにした。


とはいっても、誰もいない教室にひとりは寂しいし暇。


SNSを見ても、そんなに楽しいことも無くて、窓際にある宮近くんの席を借りて、外を眺める。


雨の音と、微かにどこかから聞こえる吹奏楽部の練習の音色。


心地よくて、ウトウトしてしまう。


時間もあるしこのまま少し寝ようかな。


机に突っ伏して、目を瞑った。





『……ん、』





頭に何かが触れる感覚がして目が覚める。





「おはよう。ぐっすり寝てたね」


『宮近くん……?』





目の前にしゃがんでいたのは、Tシャツとジャージ姿の宮近くんだった。





『どうしてここにいるの?部活は?』





頭に触れていた何かが離れた。


離れたのは宮近くんの手で、さっきまで撫でられていたことがわかった。





「サッカー部、雨降ってたら校内で隠れ鬼しているの知らない?」


『隠れ鬼って、あの遊びの?』


「そう、ダッシュのトレーニング代わり。だから自分の教室来て隠れようとしたらAが寝てた」





“俺の席で” と笑う。





『……あ、ごめんね。席 勝手に使ってた』


「いいよ、気にしてないから」





急いで席を立つと、自分の肩からひらりとジャージの上着が落ちた。


拾うと、“宮近”と名前が刺繍されたものだった。


私が寝ている間 肩に掛けてくれていたの?





『これ、掛けてくれたの?』


「俺が暑かっただけだから」





雨のせいで少し冷えている教室。


いくら体感温度に個人差はあるにせよ、そんなに暑がる程の気温じゃなくて、宮近くんが私に気を遣ってくれていることがわかる。





『ありがとう、宮近くん』


「ん。何もしてないけどね」





宮近くんの優しさは温かくて、他の人と違うように感じる。


どうしてかは分からないけど、なんだかそんな気がして心がポカポカする。

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作者名:愛生 | 作成日時:2023年12月4日 1時

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