19 ページ19
.
「おはよう」
『おはよ』
今日は私より海斗の方が準備が早かったみたい。
私が家を出ると、海斗はすぐにエレベーターのボタンを押した。
『昨日、なんですぐ帰っちゃったの？』
「だから、週に何回も行ってるから」
エレベーターが私たちの家の階に着いて乗り込むと、海斗はいつもより力強く1階のボタンを押した。
『でも、海斗が早く帰る時は私がなにかしちゃった時だもん。治したいから理由教えて？』
「昨日はそういう気分だっただけ。まじで気にしないで」
『……うん、わかった』
そういう気分って、何？
明らかに怒っているのに。
こんなにずっと一緒にいるのに教えてくれないの？
『でも私、海斗に嫌われたくないから、悪いところがあったら言ってね？ちゃんと治すから』
「Aはそのままでいいよ。それに、絶対嫌いになんてならない」
嫌いにならないなんて言ってくれるのは嬉しい。
嬉しいけど、何か隠されている気がして。
最近の海斗はどこか変だ。
電車に揺られて、高校の最寄り駅に着く。
「A、松倉」
「お、2人とも。おはよう」
『宮近くんと中村、おはよう』
2人に話しかけると、同時にかえってくる挨拶。
「お前ら今日英語で小テストあるの知ってた？俺知らなくて海斗からさっき聞いたんだよ」
「え、まじ？」
中村と海斗は今日の英語の授業で予定されている小テストの話をしていて、ふたりの足並みが揃っている。
私はというと、そんなふたりの後ろを宮近くんと少し離れて隣同士で歩いている。
「昨日」
『ん？』
隣を見ても、宮近くんと目が合わない。
「手伝ってくれてありがとう」
“お礼、ちゃんと言えてなかったから” と首元を触る宮近くんは、少し耳が赤い。
多分、宮近くんは照れ屋さんだから、こういう時目を合わせられないんだよね。
『どういたしまして。でも結局邪魔しただけだったから気にしないで？寧ろ、ごめんなさい』
私が謝ると、宮近くんはやっとこちらを向いて笑顔になった。
「本当に責任感強いよな。昨日部活行くの怠いなって思ってたから丁度良かったよ」
『宮近くんもそんな日あるの？』
「あるよ、人間だし。俺の事なんだと思ってんの」
クスクス笑う宮近くんは、なんだかとても楽しそうで私も笑顔になる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 215人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：愛生
| 作成日時：2023年12月4日 1時
