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職員室の隣にある保健室に着いて、宮近くんはそのままノックをしてすぐにドアを開けると先生は不在だった。
もう帰っちゃったのかな？
「そこ座ってて」
手を離して私をパイプ椅子に座らせた後、数ある引き出しの中からピンポイントで絆創膏と消毒液を見つけて持ってきてくれた。
『絆創膏の場所、知ってたの？』
「まぁ、部活でお世話になってるし」
そうか、サッカー部なら怪我しちゃうことがあるから慣れているのかな。
「手、出して」
私の前で屈んで、消毒液の蓋を開ける。
『絆創膏くらい自分で貼るよ』
「消毒もするから、早く手出して」
宮近くんの言葉はやっぱり、何故か心に入ってくる。
きっとこれが中村だったら、私は自分でやると言って引かなかった。
「しみるだろうけど我慢して」
切ってしまった指に触れて、消毒液を垂らす。
消毒液を軽く拭き取ると、宮近くんはそのまま絆創膏の外袋をペラペラと開いて器用に貼ってくれた。
「……はい、できた」
『ありがとう』
絆創膏を貼った指を撫でてから離れた手。
宮近くんとは普段、こんなに距離が近くなることがないからなんだか緊張する。
海斗や中村は近いのに、宮近くんだけは何だか一線を引いているみたい。
保健室から出て、さっきの階段まで歩く。
『ねぇ宮近くん。さっきのまちゅが怒るって、どうしてか知ってるでしょ？教えてよ』
「今度気が向いたらね」
『教える気ないでしょ、それ』
階段に着くと、宮近くんはさっき重ねたノートをひとりで持ち上げた。
「俺ノート提出して部活行くから、Aは早く帰りなね」
『私も半分持つ！』
「ダメ、また怪我するから。また明日な」
“気をつけて” なんて言って、宮近くんは職員室のある階に逆戻り。
……力になりたかったのに、ただの足手まといになっちゃった。
教室の机に置いていた荷物を持って、悲しい気持ちのまま一人で帰る。
軽音部の部室の横を通り過ぎると、バンドを組んだ子たちと楽しそうに話している海斗の姿。
そんな海斗の部活動の邪魔をする訳にはいかなくて、そのまま帰宅することにした。
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作者名：愛生
| 作成日時：2023年12月4日 1時
