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ジーッと見つめていると、肩に乗せていた手を掴まれる。
「A、距離感」
海斗に注意されて ふと我に返ると、思っていたよりも宮近くんと顔が近くて、勢いよく数歩後ろに下がった。
『あ、ごめん。つい……』
「大丈夫」
宮近くんはポーカーフェイスなのか、それとも本当に冷静なのか、驚いた後は特に顔色ひとつ変えることがなかった。
普段男の子たちとは はしゃいだりしているのに、私から見る宮近くんはずっと不思議な人。
よく分からないから、もっと知りたい存在。
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放課後、中村は用事があるからと先に帰って行った。
ひとりで帰るのは久しぶり。
ゆっくり帰る準備をしていると、珍しく教室に残っている宮近くんの姿。
普段なら直ぐに部活に行っているのに。
『部活、行かないの？』
「行くよ。でも日直のやることまだ残ってるから」
"今日教室の移動多くて書く暇なかったし"と、日直が書く日誌を書いている宮近くん。
教室には、私たち以外誰もいない。
『なにか手伝うことある？』
「いや、あと職員室にそこのノート持っていくくらいだから大丈夫」
チラッと見た教卓の上には、数学の授業で集められたクラス全員分のノートの山。
『私やるよ。どうせ帰っても暇だし』
「いい。置いといて？部活行く時ついでに持ってくから」
そう言われてもなにか手伝いたくて。
日誌を集中して書いている宮近くんを横目に、ノートを持って教室を出た。
階段を降りていると、前のめりになってノートの山が傾いた。
「あ……！」
マズイ、そう思った時にはもう遅かった。
バサバサと音を立てて、自分のいる段から下の踊り場まで、ノートが綺麗に散らばる。
自分は転ばなかったものの、みんなのノートを落としちゃうなんて。
汚れてないかな、折れてないかな、破れてないかな、そんな不安が一気に過って頭が真っ白になる。
早く拾えばいいのに、落ち込んで階段に座り込んでしまって動けない。
「……置いとけって言ったじゃん」
振り返って上を見ると、日誌を持った宮近くんが呆れ顔で近づいてきた。
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作者名：愛生
| 作成日時：2023年12月4日 1時
