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「海斗なら、日直だから後ろの黒板に時間割書かなきゃって先行ったわ」
『そっか、寂しいね』
「……」
急に黙り込んだ中村は、何かを考えるように立ち止まった後、私を見てきた。
『なに？私の顔になんか付いてる？』
「いや、いなくて寂しいって言ってくれるのっていいなって思って」
『え？』
「寂しがってる女の子って、可愛いじゃん」
"可愛い"なんて言われると、いつもムカつく中村にどう接していいかわからなくなる。
『……うるさい。中村のハゲ』
「は！？お前さ、」
怒ってこようとしているのがわかって、助けを求めるために隣の海斗を見ると、鬼の形相になっていた。
とは言っても、可愛いことに変わりは無いんだけれど。
「A、口悪いよ」
『ごめんなさい』
海斗は、私が小さい頃よりも素直じゃなくなって、ひねくれたようなことを言うようになってしまったことをきっと一番理解している。
そして、私が言いすぎた時はこうやって注意してくれる。
きっと海斗は、少女漫画に出てくるような可愛らしい言葉遣いの、所謂女子力の高い子が好みなんだろうな
……なんて、勝手に想像してみたりして。
「気をつけろよ、女の子なんだから。そんなんじゃ彼氏出来ないよ」
そんなの、余計なお世話だし。
『別に今彼氏欲しいとか思ってないし』
「ならいいけど。余ったら俺がもらってあげる」
『それは結構です』
「じゃあちゃんと言葉遣い気をつけてね」
『はーい』
海斗の口癖だ。
俺がもらってあげる、なんて。
私以外の女の子にも同じようなこと言ったら、勘違いしちゃうような言葉。
また中村の声がしなくなって振り向くと、さっきと同じように何かを考えるようにボーッとしていた。
『中村、行こ？』
「ん？あぁ、行く」
3人で一緒に歩いて教室に入ると、宮近くんは後ろの黒板に時間割を書いていた。
海斗たちにはシーッと静かにするように指示して、宮近くんにそっと近づく。
『わっ！』
「うわ！……あ、Aか。おはよ」
宮近くんの後ろから、肩に手をついて顔を覗き込むと、案の定驚いた宮近くんが見れて嬉しい。
『ふふっ、ビックリした？おはよう！』
ビックリした宮近くんの目は、いつもより大きくて吸い込まれそう。
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作者名：愛生
| 作成日時：2023年12月4日 1時
