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本棚の前でしゃがんでいた海斗は、拗ねてあぐらをかいて頬を膨らませたままこちらを見てくる。
ほら、小動物みたいで可愛い。
『最高の褒め言葉だと思うけどなぁ』
海斗の隣に体育座りをして、膨らんだ頬を人差し指で触れると、フーっと空気が抜ける。
いいなぁ、可愛くて。
私、海斗みたいに可愛らしい顔で生まれてきたらどんな人生だったんだろう。
「女の子にとっては嬉しい言葉なんだろうけどさ」
可愛くて、繊細で、なんだかいつも守ってあげたくなる気がして。
これって男の子が女の子に抱くような感情だよね？
だとしたら、私にとって海斗は女の子と似たものがあるのかな。
私、海斗じゃなかったら異性の幼馴染とこんな距離感で幼稚園から高校までずっと仲良くいれなかったと思うし。
『海斗も似たようなもんでしょ？』
「お前さ、……いいや。帰るわ」
『え？』
急に漫画の新刊を持ったまま立ち上がる。
「これ借りてく」
『あ、うん』
なんだか怒っているようなムスッとした顔のまま出ていった。
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「おはよー」
私たちは毎朝、お互いの家の玄関扉の間で待ち合わせをしている。
今日は海斗の方が遅くて、目を擦りながら出てきた。
『おはよう。眠そうだね』
「結局あの後すぐ新刊読んじゃって、続き気になってなかなか眠れなかった」
『でた、海斗の妄想癖』
「妄想癖とか言うなよ。想像力豊かって言ってほしい」
『夢見る少女だもんね？ごめんごめん』
「だから、そういう扱いやめろって」
プンスカ怒っている海斗と電車に乗って、揺られること20分。
高校の最寄りに着くと、またふたりで並んで歩き出す。
相変わらずムスッとして頬が少し膨らんでいる海斗は、やっぱり女顔負けの可愛さ。
『今日も可愛いね、海斗』
「だから可愛いは求めてないって」
『でも可愛いんだもん』
頬をツンツンと触っていると、背後から特徴的な笑い声が聞こえてきた。
「うわ、また朝からイチャついてる」
「おはよう海人。てか、イチャついてねぇし」
『中村おはよ』
「ん、おはよ」
私たちの少し後ろを歩く中村の隣には、いつも一緒に来るはずの宮近くんがいない。
「今日ちゃかは？」
海斗も同じことが気になったみたい。
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作者名：愛生
| 作成日時：2023年12月4日 1時
