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最近はこうして連絡をくれて、普通にインターホンを押して玄関から入ってきてくれる。
今も、部屋の扉にノックする音が聞こえた。
『入っていいよ』
返事をすると、海斗はスウェット姿で片手に漫画を持って入ってきた。
「A」
『どうしたの？』
「この漫画の続き、貸してくんね？」
ヒラヒラとチラつかせる物は、私がハマって買った少女漫画の単行本。
『それの新刊、買ってまだ読んでないから海斗が先に読むことになるんだけど』
「いいじゃん、すぐ返すし。ハマったわこれ」
良いと言っていないのに本棚の前にしゃがんで物色しだす海斗は、幼馴染の特権を使い放題。
『少女漫画なのに？』
「そんなこと言ったらAは少年漫画の方が好きじゃん」
『それはそうだけど。それならお互い買うもの交換した方がいいんじゃない？』
「いや、どっちも読みたいし。俺少女漫画買うの恥ずかしいもん」
『勝手に恥ずかしがってれば？』
我ながら、冷たい言葉。
海斗は繊細だからこういう言葉で傷ついちゃうこと、わかっているのに。
成長するたび、意地悪くなっているように感じて、自分が嫌になる。
ただ真っ直ぐ生きている海斗とは違って、どんどん素直じゃなくなっていく。
「酷い。俺泣くよ？」
ほら、また傷ついた顔で私を見てくる。
『泣きなよ、"泣き虫のまちゅくらくん"』
「マジでそれ一生いじってくんの許さないからな」
中学校の入学式の日、ホームルームで自己紹介をする時に噛んで「まちゅくらかいと」と言って、恥ずかしさで泣いてしまった事があった。
私はどうしていいかわからずに、泣いてしまった海斗にティッシュを差し出したら、“夫婦だ！”とか、“カップルだ！”とか、周りの人が茶化してきて。
私も恥ずかしくなってしまってから、ふたりでいる時以外は呼び方を「海斗」から「まちゅ」に変えた。
……というのは表向きの理由で。
本当は身近に海斗が3人いてややこしくなることと、周りのクラスメイトに苗字呼びの人が増えて、1人だけ名前で呼ぶのが恥ずかしくなったから。
海斗って呼びたいけど、また中学生の頃みたいに茶化されるのも嫌。
だから、2人きりの時だけ海斗呼びに戻している。
『いいじゃん。海斗の"まちゅ"って呼び名も可愛いし』
「可愛いって言われても嬉しくない」
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作者名：愛生
| 作成日時：2023年12月4日 1時
