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「A、帰ろ」
『うん』
宮近くんはサッカー部、海斗は軽音部に入っている。
宮近くんと中村は実家が高校の最寄り駅の近くで、私と海斗は電車で通っている。
部活に入っていない中村と私は、帰り道が駅まで一緒になるからと、最近はずっと2人で帰っている。
4人でいる時は喧嘩しがちだけど、何故か2人になると喧嘩は殆どしない……なんてことはない。
「あー、ハンバーガー食いてぇ」
『寄って帰る？』
「うん」
駅までの道にMから始まるファストフード店があるから、たまにこうして寄る日がある。
『じゃあセットにしてよ。ポテトもらう』
「なんであげる前提なんだよ」
『私財布忘れたもん』
「交通系のICは？中にお金入ってないの？QR決済とか」
私のカバンに付けている白うさぎのキャラクターの定期入れを触る中村。
ぬいぐるみのようなデザインで、中村はそのうさぎを何度も容赦なくギュッと握ってくる。
『あるけどない』
「あーはいはい。払う気ないんでしょ？じゃあ5本あげるよ」
『5、6、7、8、9……？』
「10？」
私につられて数字を言った中村は、”やべ！“と手で口をおさえた。
私の作戦に気づいたみたい。
『やったー！10って言ったから10本ね』
「は？お前マジでふざけんな！」
『早く行こ！』
腕を掴んで走り出すと、怒っていた中村が何故か笑顔になった。
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「じゃ、気をつけて帰れよ」
『うん。また明日！』
中村と駅前で分かれて、電車に揺られて帰宅。
ご飯を食べてお風呂から上がって、部屋で時間割を眺めながら明日の準備を進めていると、スマホから通知音が聞こえた。
"今から行っていい？"
そう来ていたのは、海斗から。
幼稚園からたまたまずっと同じ学校に通っている海斗は、同じマンションで隣同士。
ベランダに面しているのはリビングと自分の部屋で、海斗の家も同じく、リビングと海斗の部屋が面していた。
さらに部屋の構造上、私の家と海斗の家は左右非対称になっている。
つまり、壁を挟んで隣が海斗の部屋。
中学生の頃までは、ベランダにある仕切り板をなんとか避けて海斗が私の家に来たことがあって、嫌という程怒られて、ふたりで泣いたっけ。
そりゃあ親も怒るよね。手足が滑って落ちたら……なんて、怖くて考えたくもないくらいだから。
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作者名：愛生
| 作成日時：2023年12月4日 1時
