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「こ、これは、これは何ですか!?」


興奮気味のAが指差したのは、三人の服だった。
三人は首を傾げる。

降谷は、白のワイシャツにグレーのスーツパンツ。
赤井は、黒のタートルネックに黒スキニー。
諸伏は、濃緑のスウェットにジーンズ。

何と言われても…服としか答えられない。

三人がどう説明しようか悩んでいる間にも、Aはどんどんと寝室にある、あらゆるものが何なのかを矢継ぎ早に訪ねてくる。

咄嗟に大正の人間でも分かるように説明すればするほど、顔を赤らめ鼻息を荒くする。
あまりの興奮ように若干引きつつある三人。


「Aちゃん、少し落ち着こっか?」

「諸伏さん!落ち着いていられますか!!!目覚めてしまえば終わりなのですから!!」

「「「…え、?」」」

「私は眠りが深い為、夢などは見ないはずなのですが…きっと今は浅いのでしょう、だからいつ目覚めるか分からない、夢を楽しまないと!!それも100年以上後の我が国の時代の夢……!!素晴らしい!!なんて、文明が発展発達してるのでしょう……!!素晴らしい、なんと素晴らしい!!!」


Aは興奮気味に話す。

三人は血の気が引いていく。
まさかこの子は、夢だと思っているのかと。

当のA本人は、夢だと思っている……否、思わないといけない程に、あまりの摩訶不思議な光景に頭も心も追いつけていなかった。

荒くなる息遣いに確実に腹が痛むはずだが、興奮で痛みなど感じていないA。
それがより一層、この光景が夢だと思う要因のひとつでもあった。


「Aちゃん、残念だけどこれは夢じゃないんだ」

「降谷さん、何を仰いますか!!!これは夢です!!!その証拠に貴方達に触れることはできな……い…」


Aの手が降谷の腕に触れる。

初めて触る、さらさらとした質感の生地。
その生地越しに伝わってくるのは、生きている者の温もり。
血の通う、生身の……人間の温もり。

Aは確かめるように降谷や赤井、諸伏を触っていく。三人は黙ってそれを見守る。

どれもが感触があり、そして、温もりが手の平から伝わってくる。

顔色が一変。

Aは真っ青な顔をして、かたかたと身体を震わす。
指先まで震えるAの様子に、三人はどうしたものかと慌て、息を呑む。


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漂白剤 - 面白い・・・・・・主人公可愛い・・・・続きが楽しみ!!! (2020年9月20日 13時) (レス) id: 836661e0c9 (このIDを非表示/違反報告)
癒秘松(プロフ) - 面白いです頑張ってください! (2020年6月22日 14時) (レス) id: ac573f2cb6 (このIDを非表示/違反報告)
斑鳩(プロフ) - あれ?コメント出来るようになってる…!夢主さんと降谷達のジェネレーションギャップが良いですね!今後も頑張ってください! (2020年5月20日 13時) (レス) id: e4a4760cd6 (このIDを非表示/違反報告)
ぱすてるくれよん - すごく面白くて読むのがとても楽しいです!!私はコナンも鬼滅も好きです(赤井さんと無一郎が特に)更新頑張ってください! (2020年5月19日 22時) (レス) id: 79fdb8f695 (このIDを非表示/違反報告)
花璋(プロフ) - なんかもう本当に大日本帝国であった頃の文化や価値観を文章として巧みに表現なされていて、読んでいて自然と居住まいを正してしまうような、素晴らしい文章力にコメントが上手くまとまらない程感動しました!類を見ない異色の合わせに今後の展開がとても楽しみです! (2020年5月3日 21時) (レス) id: 16d4e71997 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水梨リンゴ | 作成日時:2020年4月28日 18時

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