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･･･正直に言うと、小瀧に惹かれてない訳ではない。
好きと言われるようになってからどうしても小瀧のことを意識するようになってしまい、
気づいたら、本当に不本意ながら、彼のことを好きになってしまっていた。
これがもし小瀧の戦略だとしたら、私と小瀧の攻防戦は小瀧の圧勝ということになる。
しかし、だからと言って降伏を宣言することはできない。
そして実はその最大の理由が、歳の差だったりする。
私は来年の春、就職で上京することが決まっている。
つまり、もし私と小瀧が付き合うことになったら半年後には、
かたや社会の波に揉まれながら毎日必死に生きるアラサー間近のOL、
かたやキャンパスライフを謳歌する若さ溢れる大学生。
しかも遠距離。
そんなの続く訳がない。
半年くらいのお遊び感覚で小瀧と付き合うなんて、絶対に嫌だ。
だからこれは私なりの小瀧への精一杯の誠実な対応のつもりなのだ。
それなのにこの男ときたら、今も隣でぶつぶつ呟きながら何か仕掛けようと企んでいる。
「うーん、押しまくればいけると思ったけどこれじゃあ真剣さが伝わらへんのかなぁ。」
暫く考えこんだ後、よし、と立ち上がりこちらを向く。
悪い予感がしたので、気づかないふりをして無心でブランコを漕ぎ続ける。
「Aさん。」
何を言われようと無視だ。
「Aさん。」
すると、今度は私の漕いでいるブランコの鎖に手をかけた。
勢いを削がれたブランコは動きを止め、
不自然な沈黙が生まれる。
これはまずい。
頭の中で危険信号が鳴り響く。
焦る私を他所に、
小瀧は鎖を持つ手を滑らせ、私の手に重ねる。
そして私の前に来ると同じように反対側の手も拘束し、私の足元に影を落とす。
いよいよ逃げ場を失ってしまった。
決心してそーっと顔を上げると、
頭上にはいつになく真剣な小瀧の顔。
「Aさん。好きです。俺と付き合ってください。」
「･･････はい。」
私の負けだ。
これが惚れた弱みというやつだろうか。
はたまた、私もまだまだ若いということなのか。
正しいと思ってつき続けた嘘は、
好きな人の熱のこもった眼差しの前ではこんなにもあっけなく壊されてしまうのだった。
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続く
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作者名：うにこ | 作成日時：2021年1月17日 23時
