オレンジジュースに沈めた記憶(W黄) ページ1
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昔は、食後の飲み物は必ずオレンジジュースだった。
コーヒーは苦いし、紅茶は独特な風味が苦手だったから。
そんな私を彼は子供舌やなってよく馬鹿にしていた。
当時は、そんな彼に対して、自分も子供っぽいところがあるのに棚に上げてずるい、とむっとしたものだが、
コーヒーも紅茶も飲めるようになった今となっては懐かしい思い出だ。
そんなことを思い出してしまうのも、ここが彼とよく来ていた喫茶店だからだろう。
別れて3年が経とうとしているのに、未練がましく思い出の喫茶店に通ってしまう今の私を見たら、今の彼はあの頃みたいに馬鹿やなぁと笑ってくれるだろうか。
「食後のコーヒーお持ちしました。
ごゆっくりどうぞ。」
店員さんに軽く会釈をしてコーヒーを口に運ぶ。
そう言えば、いつからオレンジジュースを頼まなくなったっけ。
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カランコロン。
来客を知らせるベルがなる。
コーヒー一口で随分と思い出に浸っていたらしく、
ベルの音で一気に現実世界に引き戻される。
今日は妙に感傷的になってしまっていけない。
気持ちを切り替えようとコーヒーを飲み直す。
コツコツコツ。
足音がすぐそこで止まり、テーブルに影を落とす。
ふんわりと漂う懐かしい香りに咄嗟に顔を上げる。
「コーヒー、飲めるようになったんやな。」
「･･･淳太くん。」
「久しぶり。元気しとった？」
「どうして･･･？」
「なんか朝起きてから何しようって考えてたら無性にここに来たくなって。」
言葉に詰まってしまった私を他所に、
淳太くんは向かいの席に座る。
その先を聞いていいのだろうか、無性にここに着たくなったというその理由を。
「すみません、ランチセット１つ。
食後の飲み物は、」
期待してもいいのだろうか。
「･･･オレンジジュースで。」
いたずらっ子みたく笑う淳太くんに子供みたいだねって伝えたら、少し目を見開いた後にくしゃくしゃな笑顔でお互い様やなって返してくれて。
そうして過去のことを思いきり笑い合った後に、もう一度好きだと伝えてみてもいいだろうか。
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作者名：うにこ | 作成日時：2021年1月17日 23時
