第46話「理由」 ページ47
「おーい紫乃ー！！」
真理亜は、私に変わらない笑顔で話しかけてきた。
「！真理亜…」
「見てみて、衣装がついに完成したんだよ！！」
真理亜はそう言って、私に陽だまり姫のドレスを見せてきた。
ふわふわとしたフリルとレース、そして煌びやかなビーズやパーツで飾られた、とても美しいドレスだった。真理亜が着たら、きっと本物のお姫様のように綺麗だろう。
「わあ、すごい……！！」
「ふふっ、でしょでしょ！？」
真理亜は嬉しそうに言う。
けれど、私は今朝聞いた会話が頭から離れず、つい表情が暗くなってしまう。
「？紫乃、どうしたの…？」
「…あの、さ……真理亜、今朝のことなんだけど…」
私は勇気をだして、真理亜に今朝のあの会話のことを聞いてみた。
「！ああ、あれか…！あのね、実はあたしとあの女子たちで、家に泊まって衣装を作ろうかって話になったの…本当は紫乃も誘おうとしたんだけど、紫乃は自分の衣装作りや劇の練習があるでしょ？だから、あたしの仕事手伝わせるのは悪いと思って…代わりに、たまたま予定が空いてたトメに協力してもらったんだ。」
真理亜は申し訳なさそうな表情で言う。
確かに、クラスの他の子達の都合が悪かったなら、他クラスで仲のいいトメを誘うに決まってる。
「！そう、だったんだね…」
「うん、そうなの…だから、紫乃を仲間はずれにしたとか全然そういうのじゃないからね！？」
真理亜は私に強く言う。彼女の表情からして嘘ではないことは分かるが、それでも私の心には小さなヒビが入ったままだった。
真理亜は私に気を使ってくれたのだ。自分の仕事がさぞかし大変だろうから、邪魔をしないように、と…
そんな真理亜の優しさを素直に受け止められない自分が嫌になる。
「う、うん…大丈夫だよ！ありがとう…！私に気を使ってくれたんだね…」
「！そうなの！紫乃、劇のセリフも多いし、衣装もあるし…」
「そうだったんだね…ありがとう。……それにしても、このドレスすごいね…！」
私は必死で笑顔を作り、話題を変える。
劇のセリフが多くて、衣装作りがある。それは真理亜も同じなのに…もう少し、私を頼ってくれてもいいのに…
自分じゃ役不足なのだろうか。そう考えて余計気分が落ち込んでしまう。
その日は、なんとなく気分が落ち込んだまま過ぎていった。
そして、その矢先にそれは起こった。
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作者名：みかんの缶詰め | 作成日時：2023年5月18日 19時
