第41話「準備開始」 ページ42
翌日。早速、文化祭に向けての準備がスタートした。
私たちのクラスは、登場人物たちの衣装製作や大道具・小道具作り、そしてもちろん劇の練習も入ってくるので大忙しだ。
クラスには演劇部の子達がいて、部活ではもう使わない衣装やパーツ、布などを提供してくれた。衣装は、少し作り替えるだけでいいものもあれば、大幅な改造が必要なものもある。特に、真理亜が着る陽だまり姫の衣装はたくさんのビーズやフリル、レースで飾られているため、一番時間がかかるらしい。
そして、大道具・小道具は男の子たちが、台本は学級委員の子達がシーンの調整なども入れながら作ってくれているので、私は自分の衣装作りに取り掛かることになった。
月影姫の衣装は、深い青と紫が混ざったような暗めの色のドレスだ。偶然にも、演劇部から提供された衣装の中に、似たような色のショートドレスがあった。これにフリルや多少のパーツを付け足せば、直ぐに出来上がる。
「哀川さん、手伝うよ。」
クラスメイトの女の子が２,３人手伝いに来てくれた。学級委員の子達が衣装の分担を決めたらしい。
「あ、ありがとう…」
私はその子たちと作業を始めた。しかし、皆しきりに真理亜たちの方を気にしているようだった。
やはり、向こうの方がいいのだろう。この子達は皆、真理亜の友達だ。普段、私とは全くと言っていいほど話したりしない。
何とも居心地が悪かった。気まずさというかぎこちなさというか、そういうものが私たちの間に漂っている。
「…ね、ねえ、私の方は大丈夫だから、真理亜の方を手伝ってあげてくれないかな…？」
「え、大丈夫なの？」
皆は少し期待に満ちた目で私を見る。
「う、うん！ほら、真理亜の衣装って一番大変だし、人手もいるみたいだから。」
私は一生懸命笑顔を作って言う。皆はぱあっと笑顔になり、「分かった、ありがとう哀川さん！何かあったら言ってね！」と言い、真理亜たちの方へと駆けていった。
「…ふう」
これでいいのだ。私が何の役をやろうが、どれだけ衣装作りが大変だろうが、あの子たちには関係ないのだから。陰キャの私は、1人には慣れている。
「あ、やば！変なとこ切っちゃった！💦」
「ちょっと真理亜何やってるのー！笑」
真理亜たちはとても楽しそうに衣装作りを進めている。時折、男の子たちも彼女達の作業を覗きに来ては皆で談笑していた。
別にいつもの風景なのに、今日は何だか胸が痛かった。
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作者名：みかんの缶詰め | 作成日時：2023年5月18日 19時
