第40話「報告」 ページ41
「？紫乃。何だか嬉しそうね。」
部室で宿題をしていると、トメが話しかけてきた。
「！トメ。へへ、分かる…？あのね、私…」
私は、今日の役決めで月影姫役になったことをトメに伝えた。
「！そうだったの、よかったじゃない！」
トメもまるで自分のことのように喜んでくれる。
「ありがとう！もちろん、一番目立つのは真理亜だろうし、ダブル主役の片方だけど…けど、それでも嬉しいんだ。主役なんてやったことなかったから…」
私はそう呟く。すると、トメもうんうんと頷いた。
「まあそうねぇ…私も主役なんてやったことないし、そういうのはクラスで目立つ子の仕事だったから。」
トメの言う通りだ。こういう時、真理亜のように可愛くて目立つ子がいつも主役をやっていた。けれど、今回は違う。月影姫という特殊なキャラクターだからこそ、私に回ってきたのだ。私は、あの物語の作者に心から感謝した。
「頑張ってね。劇、見に行くわ。」
トメはそう言って笑った。私はとても嬉しくて、「ありがとう！」といつもよりも大きな声で言った。
〜
帰宅後。私は夕食の席でおばあちゃんに今日のことを話した。
「まあまあ、お姫様の役をやるの！？おめでとう、紫乃ちゃん！なんて素敵なのかしら！」
おばあちゃんは手を叩いて喜んでくれる。私は「ダブル主役の片方だけどね」と照れながら伝えた。
「それに、結構悲しい役なんだ。物語の後半でね…」
私は月影姫の立ち位置について話す。後半で豹変し、最期には死んでしまう。その経緯を説明した。
「あらまぁ、そうなの…でも、そのお姫様は、そんなにも王子様が好きだったのね…人を傷つけることは決してやってはいけないけれど、その気持ちが一途だったのは伝わるわ。」
おばあちゃんはそう言った。
やはり、おばあちゃんは色んな視点からものを見れる人なんだな、そう思った。
「…うん、そうなのかも、知れないね…」
「ふふ、紫乃ちゃんもそう思う…？ああ、おばあちゃん楽しみだわ。絶対お芝居見に行くからね。」
おばあちゃんはとても嬉しそうにそう言う。おばあちゃんも来てくれるなら、尚更頑張らなくては。せっかくなら、最高の劇を見せてあげたい。
明日から本格的に、文化祭の準備が始まる。生徒会で色々やることもあるから、きちんと算段をつけておかないといけない。
まず何をするべきか…私の夜は、そんなことを考えながら更けていった。
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作者名：みかんの缶詰め | 作成日時：2023年5月18日 19時
