第39話「決定」 ページ40
「…はい？？」
私は思わず呆けた声を出す。今クラスメイト達はなんと言った？
「紫乃さんなら、いつも真理亜と一緒にいるし、いいんじゃない！？」
…ちょっと待ってくれ。まさか私を月影姫に推薦しているのだろうか？
「いいかも！それに、原作の月影姫と雰囲気似てるし！」
クラスメイトの1人がスマホで画像を見せる。確かに、原作の月影姫はショートヘアーでブルーの瞳をしており、どことなく私に似ていた。
「ホントだ！似てる！」
「わあ、いいね！」
クラスメイトたちは次々と賛同する。私はまだ混乱していたが、もしかしたらこれはチャンスなのではないかと思ってもいた。
月影姫はダブル主役の片方で出番は格段に多い上、陽だまり姫には劣るものの、それなりに綺麗なドレスを着ている。つまり、「目立たない」という特徴のキャラでありながらも、多くの人の目につくことが出来るのだ。
もしかしたら、それが副会長の目に留まるかもしれない。
ドレスを着た、お姫様の姿の私を見てもらえるかもしれない。
そう考えると、この役をやらなきゃ損だ。せっかくこう言ってくれてるならば、私がやってもいいのだろう。
「う、うん…わかった。私、月影姫やりたいな…」
私はおずおずとそう言った。
「他の人の立候補がなければ、月影姫役は哀川さんに決定しますが大丈夫ですかー？」
学級委員の子がそう呼びかけると、クラスからは「大丈夫でーす」と声が聞こえた。
「では、月影姫役は哀川さんに決定します！」
私は今人生で初めての経験をしている。劇の主役だ。
2人いる内の1人とはいえ、私は生まれて初めて主役をやる。
そう思うと、たまらなく嬉しくなった。何より、あの真理亜と同じ「主役」という位置に立っていられるのだ。いつも、雲の上の存在だと思っていた真理亜と同じ場所に。
頑張ろう。私なりに、最高の月影姫を演じてみせよう。私はそう決心した。
こうしている間にも、悪夢への扉は開きつつあった。
けれど、それはまだ誰も知らない。
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作者名：みかんの缶詰め | 作成日時：2023年5月18日 19時
