第35話「新たなる始まり」 ページ36
その後、会長、もとい神室 真司君は生徒会長を辞任すると発表し、生徒会選挙が行われることになった。
生徒会選挙では、モブ君や他の候補者も含めて演説が行われた。
そしてその候補者の中には神室君の姿もあった。副会長らの説得により、もう一度立候補することになったのだという。
結果、彼は無事当選し、同じ失敗を繰り返さないように反省を生かすと決めたそうだ。
実はあの後、私は会長のことが気がかりで副会長に相談しに行った。すると、副会長は「…あいつなら、絶対に大丈夫だ。」と私を安心させるかのような事を言っていた。
後々聞いた話によると、神室君のことを彼のお兄さんが心配し、味方をしてくれたのだそうだ。それもあって、彼は心を入れ替えることが出来たのだろう。
めでたしめでたし、で終わることはなく、また新しく再スタートを切った塩中。
いつもの日常がこの学校で過ぎて行き、私も平穏な日々を過ごしていた。
そして、しばらくたったある日。ついにこの時期がやってきた。
「文化祭でやる出し物を決めたいと思いまーす」
塩中の一大イベント、文化祭である。
毎年大盛り上がりを見せるこの行事は、生徒たちも張り切って準備するので、中学校にしてはクオリティが高い。
私も過去に食品屋台やカフェを経験している。果たして今年は何をするのだろうか。早速、黒板にはクラスメイトたちの希望が書かれていく。
「けどよー、食品は結構やってるんだよな」
「そうそう。被ったりすると嫌なんだよねー」
ふとそんな声が上がる。確かに、既にやってる食品だったりするとイマイチやる気も出ないだろう。
「…！そうだ、今年は演劇なんてどう！？」
そう声をあげたのは、真理亜だった。クラスメイトが皆彼女を見る。
「演劇？」
「そう！みんなで衣装やセット作って、お芝居をやるの！あたしたち3年生だし、演劇部の子もクラスにいるし、クオリティ高いの出来そうじゃない？」
真理亜はクラス全体に説明する。この短時間で自分の希望をまとめてプレゼン出来る辺り、流石は真理亜だと思った。
「それいいかも！」
「確かに面白そうだな！」
クラスの皆も喜んで賛同している。どうやら反対する人はいなさそうだ。
「では、今年のクラスの出し物は演劇に決定します！」
クラスから拍手が起こる。今年は演劇か…何だか新鮮だな。私はしみじみそう感じていた。
これが、新たなる始まりであることを、私はまだ知らなかった。
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作者名：みかんの缶詰め | 作成日時：2023年5月18日 19時
