第34話「和解」 ページ35
「……すまなかったね」
会長は、力無くそう言った。
「え……？」
「…君を校内のゴミ扱いして……酷いことを言った」
ぐったりとした声音で言う会長からは、深い後悔と憔悴が伝わってきた。
「……いいよ、もう…あたしも、ついカッとなって突き飛ばしたりして、ごめんね……」
真理亜も俯きながらそう言った。やはり、心にずっとつっかえていたのだ。
「……もう、大掃除は終わりだ…本当にすまなかったね」
会長はそう言うとふらっと踵を返し、再び歩き出した。
「あ、会長……！！」
真理亜はその背中を追いかけようとしたが、途中で止めた。今は、これ以上深入りしない方がいい、そう思ったのかも知れない。
「……よかった……」
根本的に全て解決できたかどうかは別として、これで何もしないよりかは遥かにいいだろう。
「…ねえ、真理亜」
そして、私は真理亜に向き直る。私も彼女に伝えたい。
「…ごめんね…真理亜のこと助けてあげられなくて…」
「っ！紫乃……」
こういう事情があってあんなことになったのだと、私があの時先生に言えていたなら。会長に、真理亜はそんな子じゃないと言えていたなら。
真理亜と、きちんと話をしていたなら。
私は、それらが出来なかった後悔を口に出す。
「…紫乃……紫乃が謝ることじゃないよ…あたしだって、あの時突き飛ばしたりなんかしないで、ちゃんと会長と話してたら…」
真理亜は私をじっと見つめてそう言う。
「…紫乃、あたしは、紫乃のこと利用しようとか、都合がいいとか全く思ってないよ…紫乃っていう1人の人間が大好きだから、一緒にいたいの…」
真理亜のその言葉を聞いて、私は目を見開いた。
それと同時に、もしかしたら本当に…と真理亜を疑った自分を恥じた。
「…っ……真理亜…ありがとう…ごめんね……」
私の目から自然と涙が零れる。
「紫乃…あたしこそ、ごめんね…紫乃が心配してくれた時、ちゃんと話せばよかった…」
真理亜も目に涙を浮かべ、私に言う。私は、涙を拭いながら首をぶんぶんと振ることしか出来なかった。
「…紫乃、大好きだよ」
「……！私も…私も、真理亜が大好きだよ…」
私たちは同じ気持ちを口にして、そして笑った。
今この瞬間、改めて真理亜と親友になれた気がした。
「……よかったな」
どこからか、誰かのそんな声が聞こえたような気もした。
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作者名：みかんの缶詰め | 作成日時：2023年5月18日 19時
