第32話「助言」 ページ33
私は会長に頼みを伝えた。
本当は自分で動くしかない。寧ろ、そうしなきゃいけない。
けれど、今の私ではそれは不可能だ。ぺーぺーで気の弱い私では、絶対会長に言いくるめられてしまう。自分の力量を知っているからこそ、誰かの力を借りるしかない、そう思った。
「…人任せにするなんてずるいって分かってる…でも……」
言ってるうちにどんどん自信をなくし、自己嫌悪に陥る。私は1人じゃ何にも出来ないのだ。
「…」
副会長は無言でじっと私を見つめる。
「…本当にそう思うのか？」
「え…？」
副会長は私の目を見つめたまま言う。
「本当に、お前はあいつに何もしてやれない。そう思っているのか？」
「っ…！だって…私じゃ何も…」
きっと私では何の解決にもならないに決まってる。
そう言おうとした時。
「…お前は、出来ることを全てやったのか？」
「…え…？」
副会長は私に真剣な眼差しを向ける。
「…お前は、あいつにひたすら、何回も声をかけ続けたり、神室を説得し続けたりしたが、それでもダメだった…そうなのか？」
私はそれを言われてハッとした。私は、まだ何も行動していない。真理亜には1度声をかけだけで、会長に至っては話をしに行ってもいない。
「…ううん…そうじゃ、ない…」
「…なら、最初からそうやって諦めるな。自分に何が出来るかなんて、やってみなければ分からないだろう。まずは、自分で精一杯行動するんだ。」
副会長は私にそう語りかけた。
「どうせ無理だよ」「お前じゃできないって」「やめときな」
私は、今まで生きてきた中でそういう言葉をたくさんかけられてきた。
それでも押し切ってやったら、必ずプレッシャーで失敗した。そしてもっと罵倒された。
だから、私は最初からやらないことにした。その方が傷が浅く済んだから。
けれど、副会長は違った。
私に「自分でやってみるんだ」と助言してくれた。
まるで、「私なら出来る」と言わんばかりに。
「…分かった……ありがとう、副会長…」
私は顔を上げ、副会長にお礼を言う。
「…何も礼を言われるようなことはしていない。…とはいえ、神室のことは私も気がかりだったんだ。その件に関しては善処する。」
副会長はそういうと、踵を返して去っていった。
「…よし」
副会長のおかげで、私は決意した。明日、真理亜と会長に話をしに行こう。この大掃除を終わらせるためにも。
しかし、この事件が意外な形で終わりを迎えることになるとは、私はまだ知らなかった。
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作者名：みかんの缶詰め | 作成日時：2023年5月18日 19時
