第30話「事件」 ページ31
その翌日。
私が学校に登校すると、昨日と全く同じ光景が広がっていた。
「だから、どうしてあたしが処罰されなきゃいけないの！？あたしがそんなに悪いことしたの！？」
「どんなに小さなゴミでも、残らず掃除しないとね。」
どうやら、どうしても納得いかなかった真理亜が会長を呼び止め、そこから口論に発展したらしい。
「何それ…酷すぎるよ！！」
真理亜は大分激昂している。顔を赤くし、怒りが浮かんでいるのが分かる。
「言われて怒るってことは自覚があるんじゃないかい？…それに君、よく哀川くんと一緒にいるみたいだけど…」
私は思わず物陰に隠れる。会長が私の名前を出した…？
「！それが何！？あたしは、紫乃の親友だもん！当然でしょ！？」
「…本当に、『親友だから』なのかい？」
会長は冷たい瞳でそう言った。私は目を見開く。
「…は……？」
「彼女は君と正反対と言っても過言ではないだろう？それなのに、何故一緒にいるのかが不思議でね。…本当は、彼女なら君の行動を咎めたりしないからじゃないかい？」
「！？な、何、それ……」
真理亜はわなわなと体を震わせている。
「大人しい彼女なら、君が好き勝手しても何も言わないだろうし、生徒会役員なら色々と使えて便利じゃないか。君は、最初からそれが狙いで彼女のそばに…」
会長がそこまで言った時だった。
「っ！黙れ！！」
ドンッ！
真理亜が会長を突き飛ばした。
私は一瞬何が起こったのか分からなかった。何より、あそこまで怒りを露わにする真理亜を見たことがなかった。
「っ！…はは…ほらごらん。君だって、暴力で解決しようとする不良たちと一緒じゃないか！」
会長は腰をさすりながら立ち上がり、真理亜を指差した。
騒ぎを聞きつけてやってきた生徒たちや、先生までざわついている。
「おい、日野！何をしていたんだ！？」
先生の1人が真理亜に詰め寄る。
「！先生、違…あたしはただ……！」
真理亜自身も混乱していて上手く説明できていない。
そうしてる間に、会長は「それ見た事か」という顔をして立ち去っていってしまった。
私が行かなければ。ちゃんとした理由があったと説明しなければ。
けれど、他の先生たちが「もう教室に入りなさい」と生徒たちを誘導し始めた。
私も「早く行きなさい」と急かされてしまい、真理亜の元へ行くことが出来なかった。
私は、親友1人助けることが出来ないのか…
そんな絶望と自責の念で、私は押し潰されそうになった。
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作者名：みかんの缶詰め | 作成日時：2023年5月18日 19時
