第3話「会話」 ページ4
しばらく私たちは黙々と作業を続けていたが、彼がその沈黙を破った。
「お前は何部に所属しているんだ？」
他愛もない質問だったが、私は緊張して上手く答えられない。
「っ！わ、私は…えっと…美術部と…の、脳感電波部……」
「は？」
あまりにもぶっ飛んだ答えだったのか、彼は驚愕してこちらを見た。
「あ、あの、えっと…ぶ、部長のトメが、兼部でも幽霊部員でもいいから入部してくれって言って…」
私は元々美術部に所属していたが、今言ったように同級生、及び脳感電波部の部長・暗田トメから強く懇願されたので、案の定断れず入部したのだ。
「…そうだったのか……」
彼は大きなため息をついた。そりゃあ、生徒会役員がブラックリストの部活に入っているとなれば、そうなるだろう。
「あ、あの…ご、ごめんなさい……」
猛烈に申し訳なくなり、私は咄嗟に謝った。
「…別に謝ることではないが……何かやばい事に巻き込まれるようなら、すぐに私に報告しろ。」
彼は頭を抱えながらそう答えた。
「あ、う、うん……」
私は冷静にそう答えたが、それとは裏腹に心臓は更に速さを増していた。
(もしかして、今心配してくれた……？)
彼からしたら、生徒会としての仕事のためにそう言ったのだろう。
けれど、私のように様々な経験値が低い人間の脳みそでは、その言葉は私の身を案じてくれてるのでは？と都合よく変換された。
「…よし、こちらは終わった。お前は？」
彼は手早く仕分けを終え、書類を綺麗に整頓していた。
「！わ、私も、終わったよ…」
私も、仕分けし終えた書類をまとめ、彼に渡した。
「…うむ、問題ないな。ありがとう。では、私はこれで失礼する。」
彼はそう言い、書類の山を持って生徒会室を出て行った。
「……はふぅ」
私は何だか全身の力が抜け、机に突っ伏した。
「何だか、夢でも見てる気分だな……」
傍から見ればただの生徒会役員同士の短い作業でも、私には長く甘い夢のような時間だった。
「…また、すぐに会えるかな……」
私はそんな淡い期待を抱きながら、オレンジ色に染まる空をずっと眺めていた。
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作者名：みかんの缶詰め | 作成日時：2023年5月18日 19時
