第16話「梅雨の喜劇」 ページ17
私の中で何かが弾けた瞬間、昇降口の窓と扉が全て開け放たれた。
超能力が出てしまったのだ。まずい、今外は…そう思った時、雨風が勢いよく昇降口に吹き込んできた。
「な……！！！？」
「わーー！？」
私と副会長はパニックになったが、すぐさま窓とドアを閉めに走った。これ以上開けておいたら下駄箱が大惨事になる。
最後の扉を閉めた後、私と副会長はその場にへたりこんだ。
「はぁ……な、何だったんだ今のは…鍵が閉まってなかったのか…？」
幸いにも、副会長は私の力には気づいていないようだった。
「び、びっくり、した…！そ、そうだ…ごめんね副会長…お見苦しいものを……//」
私は、そもそもの原因である透けた服をタオルで隠すしながら言う。
「！気にするな…私こそ、少し取り乱した。すまない。」
副会長は少しだけ顔を赤くしながら返事をする。すると、彼はある事に気づいた。
「…？おい、お前タオルまでびしょ濡れじゃないか。まさか、それ1枚しかないのか？」
「！うん…傘が壊れちゃったから、これをかぶって走ってきたの……//」
そのため、私のタオルは本来のタオルとしての役割をもう果たせなくなっていた。
「！それじゃあ意味が無いだろう…全く、仕方ないな…」
副会長は呆れ気味にそう言うと、カバンの中から何かを取り出した。
「私が予備で持ってきていたタオルだ。これを使え。」
彼は、私にビニール袋に入った大きめのタオルを手渡した。
「え…！？け、けど悪いよ…！副会長が濡れたままになっちゃう…」
「だから、それは予備だ。私の分はきちんとある。」
はあ、とため息をつきながら副会長はそう言った。そして、私に向き直る。
「とにかく、それできちんと全身を拭いてから着替えろ。風邪を引いてからでは遅いからな。では、失礼する。」
彼はそう告げると、自分の教室へと向かっていった。
「…行っちゃった……//」
私も自分の教室へと向かった。何が何だかイマイチ理解していなかったが、いつまでもこのまま下駄箱にいる訳にはいかない。
そして、私は副会長に渡されたタオルで全身の水分を拭き取った。その時、ふわ、とタオルから副会長の匂いがした。
「…っ…副会長の、匂い……//」
私は思わずタオルに顔を埋め、脳みそが溶けそうになるほど幸せな匂いを肺いっぱいに吸い込んだ。
こんな所誰にも見せられないな…そう思いつつ、私はえもいわれぬ幸福感に酔いしれるのだった。
ーそれを見ていた人物がいるとも知らずに。
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作者名：みかんの缶詰め | 作成日時：2023年5月18日 19時
