第12話「続・借り物競争」 ページ13
「な……な……」
私は状況を把握しきれず頭がパンクしそうになる。
『生徒会副会長』と書かれた紙を持ったまま、あわあわと半ばパニックになってる私の耳に、聞きなれた声が飛びこんできた。
「おーい紫乃ーー！借り物はなぁにーー！？」
はっと我に返って声のする方を向くと、親友の真理亜がこちらに向かって叫んでいるのが見えた。
「っ！あ、う…せ、生徒……生徒会副会長！！！」
私はありったけの大声で真理亜にそう伝えると、真理亜はすぐに頷き、キョロキョロと周りを見渡す。
「！あ、あっち！！紫乃！徳川、救護テントのそばにいるよ！」
真理亜はすぐに副会長を発見したらしく、私にそう伝えてくれた。
「！あ、ありがとう！！」
私は真理亜にお礼を言うと、猛ダッシュで副会長の元へと向かった。
「あ、あの、副会長…！わ、私借り物が副会長なの…えっと、一緒にゴールまで走ってもらえるかな…！？」
私は息切れと緊張で途切れ途切れになりながらも、副会長に要件を伝えた。
「！私が？分かった。行くぞ。」
流石副会長、判断が早いなぁ…などと思っているうちに、彼は私の手を握り、走り出そうとしていた。
「な！！？//」
私は突然の事で顔を真っ赤にして硬直してしまう。
「？おい、何をしている？行くぞ。」
それに気づいた副会長が早く来い、と言わんばかりに私の手をくいっと引っ張った。
「あ、う、うん！//」
私は慌てて返事をし、カチコチに固まりながら走り出した。
足の関節が石膏で固まったかのように、あるいは産まれたての小鹿のようにぎこちなく、変な走り方をしているせいで周囲からはクスクスと笑う声が聞こえる。
最早恥ずかしさが限界突破しており、超能力が出てくる気配もない。
「もう少しだ、気張れ」
副会長は私の手を握ったまま顔色一つ変えず、私に声をかけてくれた。
「！う、うん……！//」
その言葉に勇気をもらった私は、副会長の手を強く握り、ゴールまであと少しの距離を全力疾走した。
ー結果は2位であり、私にしては上出来の順位だった。
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作者名：みかんの缶詰め | 作成日時：2023年5月18日 19時
