キミは神様

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頼りないその身体を抱きしめながら。

嫉妬で、胸の中がもう、ぐちゃぐちゃ。


「俺がおるやん。
俺は、しげの神様やねやろ？
俺がそばにおるから。
もう泣かんといて？」


気付いたら、そう口走ってた。


涙でぼろほろのしげが、
驚いた顔で、俺を見た。


「神ちゃんは、ずっとそばにおってくれる？
もう俺を一人にせえへん？」


「もう、も、何も。
まだ始まってもないやんか？」


「そうやったな。
まだ時間あるんやった」


言うてる意味はやっぱり分かれへんかったけど、
しげがやっと、笑ってくれた。






衣装合わせの時に、
しげが俺の側にやって来た。

俺に真っ白な羽織をかぶせて。


「神ちゃん、やっと神様になったな」


また、意味不明な事を言うてる。


いつもならイライラするねんけど。


この衣装が、
自分にしっくりきて、
何もかもが腑に落ちたような気持ちになった。


理由なんか分かれへんけど、
感覚的に・・・


ああ、俺は、

この役やるために、
しげの神様やるために、

俳優なったんかな、って。







それからは稽古稽古の日々。


しげとの仲が、
恋人に進展するわけちゃうねんけど、


役やって分かってても、
恋人役として、
いつもそばにおれる時間。


ついに幕が開く。


開演初日を迎えた今日。


藤井さんが、ふらりと訪ねて来た。


俺に話あるって言う。


てっきり芝居の話やと思ってたのに。


「神ちゃん、大毅と上手くいってる？
あいつ、あれで案外、繊細で傷つきやすいからさ。
年上やけど甘やかしてやったってな？」


て、いきなり言われて・・・

きょとんとなってもうた。


「え・・・それ、どういう意味っすか？」


驚いて聞き返した俺より。


「え・・・まさか。
二人、まだ付き合うてないん？」


藤井さんの方がびっくりしてる。


「なんで俺と重岡さんが付き合うてる事になるんすか」


「なんでって・・・
しげも神ちゃんも、お互い好きやんか。
どう見ても両想いやろ」


両想い、て、中学生みたいな可愛い言い方が、
あんまりにもクールな藤井さんに不似合いで、

ふっと笑みが漏れる。


けど、もしかして・・・

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