【おそ松さん】閲覧注意の短編集！ (ページ48)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:5,274 hit

風　神父カラ松ページ48

生温い風がぬるりと彼女の肌を這い、流れて行く。

彼女がそれを物欲しそうに見届ける。

『…神父様』

小さな唇を震わせて声を発する。その姿も、脆く、尊く、儚げで、俺にはとても触れられない。しかし、俺が彼女を支えているのは事実だ。今にも彼女が腕の中で生き絶えないかと、ひやひやする。

「…どうしたんだ？」

そう問うと、彼女は長い睫毛を下に向けたままゆるりゆるりと言葉を並べる。

『…風、って…終わるのでしょうか？』

そう言って、先程風が這った腕を撫でる。今にも折れそうな細い腕。俺の腕とは大違いだ。

「…さぁ。少なくとも、俺は終わらないと思うぞ」

『…父上様が、始まりがあればいつか終わりがくる、と。仰ってました』

悲しそうなその瞳は少し潤いを持ち、今にも涙がつぅ、と流れ落ちそうだ。

「…終わらないと思う。…終わってほしくないと思う」

そう言って風が向かった果てを見る。何処まで続いているのかわからない。何に終わりがあるのかわからない。

「さぁ、今宵の質問はここまでだ。ゆっくりお休み」

Aの額に唇をおとす。それだけで壊れてしまいそうだ。何度も言うようだが、とても、脆い。

彼女は瞼をおとし、光が入るのを拒絶する。いや、こんな暗がりの中、光などあれば欲しいくらいだが。

これからどうなるのかわからない。此処が何処なのかもわからない。この生活に終わりがあるのかもわからない。終わりが見えないのは、風と同じだ。だからこそ、俺は終わってほしくない。

だから、今はお休み。良い夢を。

愛しのA。