近くて、遠くて。 (ページ14)

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そーっとドアを開けても授業中だから
やはりみんなの視線は集まってしまう

『高橋、大丈夫か？』

｢あ、はい｣

この会話だけをして先生も授業を再開するし
私も急いで自分の席に着く

席に着くなり心も樹くんも心配をしてくれて、
優しい友だちに恵まれていると改めて実感する

今は古典の授業中で先生が現代語訳を黒板に書いているとき
左斜め後ろから紙くずが飛んできた

それはあの日のように私の頭に命中して

この時に及んでまでそんなイタズラしてくるのかと
慎太郎を睨めば

『(開いて！！)』

って口パクにジェスチャー付で指示してきた

前を向き直して、
ぐちゃぐちゃに丸めこまれた紙を開けた

いつかの小テストの用紙の裏側に
〝大丈夫？〟とだけ乱雑な字で書かれていた

....席が近いわけじゃないんだし、
あとからでも言えることなのにって、
変わらない慎太郎の優しさに頬が緩んでしまった

私も〝大丈夫〟っていう言葉と
慎太郎の似顔絵を描いた紙を丸めて飛ばす

それを見るなり笑顔になる慎太郎を見て
私も満足して前を向く

でもその後に慎太郎は

『森本何ニヤニヤしてんだ』

なんて先生に注意されてた

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