unusual (ページ34)

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走って、走って

誰かにぶつかったのも気にしないでひたすら走った

行き場もなく、辿り着いたのは自分の教室

後ろから2番目、窓際の自分の席に座って顔を伏せる

先生への気持ちが募れば募るほど苦しくて切なくて

“当たり前”を先生からぶつけられる度胸が痛む

……わかってるよ

自分が今抱いている気持ちが普通じゃないことくらい

先生に迷惑掛けちゃうことくらい

だけど好きになっちゃったんだもん

先生が紡ぐ英語に、声に、言葉に。

先生を形づくるそのすべてに。

……もしかしたら。

もしかしたら、先生が追いかけてきてくれるかもしれない

そんな淡い期待も儚く散って、

情けなく例の部屋に荷物を取りに戻った時には
先生の姿はそこにはなかった

次の日もその次の日も先生の姿を見ることはなくて

伊藤先生から担当が変わったから、とだけ伝えられて
伊藤先生と英語の弁論の準備をするようになった

クラスの英語の担当も同じように伊藤先生に変わった

『松村先生体調不良なんだってね？』

「…ほんとなのかな」

嫌な予感ほどよく当たるもので

先生が先生を辞めたと知ったのは文化祭が終わった放課後だった

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