unusual (ページ7)

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『高橋さんさ、英語好きなんでしょ？』

「そう見えます？」

やってきたのは結局自分のクラス

だけど夕陽の差しこむ静かな部屋で先生と2人きり

向かい合って座ってる

この時間に先生の表情を盗み見るのが本当に幸せで

『伊藤先生から引き継いだ資料に書いてる』

「えー伊藤先生そんな風に書いてくれてるんだ」

『今も英語頑張ってるもんね』

頬杖をつく、眼鏡越しの先生の瞳が私を捉える

夕陽に照らされた先生の顔が
何にも例え難いほどに美しくて時が止まったような感覚になる

…先生が私のこと褒めてくれてる

嬉しい

「先生この文章読んでよ」

『ん？ここ？
“If I had a car, I could drive you to the station.”ってやつ？』

「うん、そこ」

『なによ、高橋さんがわからないわけないでしょ？』

「先生の発音、超好きなの。だから読んでほしくて」

分かりやすく目を丸くして黙ってしまった先生

英語の先生だから言われ慣れてるはずなのに

もしかして照れてる？

『嬉しいこと言ってくれるじゃん』

「先生照れてる」

『そんなこと言ってくれるの高橋さんが初めてだもん』

「んふ、じゃあ〜、Do you have your car?」

『Yes, but I cannot drive you to the station.』

「……」

『Because I am your teacher, you know?』

「…バカ真面目」

ただの例文を使った遊びなのに、

こんな時まで夢を見させてくれない先生はやっぱり真面目で堅い

ほんの少しムカついて、無視して数学の課題を始める

『あ、ちょっと、数学は俺教えらんないよ』

「先生ってさ、ノリ悪いよね」

反論した気に言葉を探す先生だけど全く見つかる気配がなくて

その様子が可愛くて結局笑ってしまう

先生、絶対陰キャだもんね
クラスのみんなも言ってたもん陰キャ松村って

可哀想だから秘密にしといてあげるけど

「先生またよろしくね～」

『あ、だから敬語使いなさいって』

最後の最後まで注意してくる先生の言葉を無視して階段を下りる

すると

『高橋さん！』って先生にしては大きな声で呼び止められる

びっくりして慌てて振り返ると

『また明日』

そう言って手をフリフリする先生

…なにそれ、ずるい

それだけのためにわざわざ呼び止めたの？

些細な先生の言動がどんどん好きを加速させる

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