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そんなに笑うようなこと??
だけどそんな姿が見られるだけで心は満たされるから
『じゃあ俺も克服する』
「なにを?」
『Aちゃんは好きで俺が苦手なもの』
…なにそれ
ただ、私に合わせて言ってくれてるだけってわかってても
私の好きを共有しようとしてくれていることが…嬉しい
5人でいる時は向けてくれないその優しい表情も、嬉しい
「そんな急に思いつかないよ」
『なんもないの、好きなの』
約束してからずっと付けている
うさぎのマスコットを触りながらつまらなそうに呟く
好きなものはたくさんある、
だけどそれでいてきょもは苦手なものなんて難しすぎる
「…星、が好き」
『知ってる、俺も好き』
「あとは…、」
星のことを話してるだけなのに
きょもの“俺も好き”の威力が強すぎて
他が何も出なくなってしまった
それから、それから…を繰り返してるだけで
なにも会話が進まない
今思いつく私の好き、ってきょもしかなくて
『星見たくなった』
「…え?」
『星』
“ここら辺どこが綺麗に見えんの”
自分のスマホを開いて調べはじめた
これは…そういうこと、なのかな
私が、勇気を出せば、
『着いてきて、星見んの』
私の目を見ないで、視線はスマホのまま。
でも確かに彼の声でその言葉が聞こえてきた
私は少しの期待を込めてこんなことを聞く
「…皆も誘う?」
『いい』
「どっちの意味?」
『誘わなくていい』
…やった、2人でいいんだ
私が慎太郎のことが好きって言う勘違いは晴れたとはいえ、
“勘違いされたくないんじゃないの?”
って思ってしまう気持ちは隠して素直に喜んだ
春の風が少し湿めっ気を帯びはじめた5月の末だった
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作者名:ダイア | 作成日時:2022年10月19日 22時