96 ページ6
・
『じゃあ俺も〜』
私の背中を追いかけるように
慎太郎もカップをもって歩いてきた
「それ誰の分?」
『きょもの、A注いで持ってく?』
「いいよ別に、慎太郎が頼まれたんでしょ?」
『でも俺そっちの機械使わないから代わりにやって』
そんなところで気を遣ってもらわなくてもいいのに
まして中学生じゃないんだし
ほぼ押し付けられるようにカップを渡されて
仕方ないからきょもの分のドリンクも注ぐことにした
あの日と同じ赤色の液体
よくもこんなの好んで飲めるよなあってのが正直な感想ではある
だけど
『え!なんで同じの2つもあるの?』
「なんか…私も挑戦してみたくなっちゃって」
テーブルに戻ってきた私の両手には赤い液体が注がれたカップ
なんとなく、今なら飲める気がしたから
それに好きな人が好きなものを私も好きになりたい
そんな単純な思考
『無理だったらもらうから』
「あ…うん、有難う」
涼しい顔でトマトジュースを流し込むきょもを見て
私も意を決して喉に流し込む
「…ん、」
…やっぱり苦手だ、なによりこの匂い、…うん
みんながニヤニヤした視線を向けてきてるのがわかるから
意地でも全部飲んでやろうってもう一度口に運んだ
『無理すんなって』
だけど、カップが唇に触れたところで長い腕が阻止してきた
え………
『もうこれ俺のだから』
“新しく持ってくれば”って私のカップの残りを一気飲みした
私が苦手ながら全部飲み切るのを期待していたであろう3人は
少しつまんなそうな表情をしていたけど
きょもの優しさが嬉しかった
・
1334人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ダイア | 作成日時:2022年10月19日 22時