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『ちょっと歩ける?』
「…え?」
『見つけたとこ、少し距離あるとこだから』
え……、ちゃんと“探検”してくれてたの?
てっきり、てっきり、口約束だと…
『なにその顔』
「連絡…何にもなかったから」
『わざわざするかよ』
少し呆れたようなきょも
そのまま強引に左手を引っ張られた
さっきと違うのは、
彼の指がしっかり絡まってちゃんと手が繋がれてるということ
彼の右手から伝わる熱が痛いくらいに熱い
少しずつ人が増えてきた道
何度も私のことを捉えて隣にいるか確認してくれて
浴衣の私のことを考えていつもよりゆっくり歩いてくれて
…どうしよう、全部が大好きで苦しくてたまらない
「…ねぇ?」
『ん』
「さっき、慎太郎と何話したの?」
『…忘れた』
…また。すぐに忘れたふり
だけど言いたくないこともあるだろうから
それ以上深掘りするのはやめた
「今さっきのことなのに忘れるんだ、記憶力ヤバー」
『うるさ、そっちだって昔のこと何にも、』
「…覚えてるけど?」
『…うざ』
なんだそれ
だけど見えた。
街灯に照らされた横顔が少し緩んでる気がしたの
こうやって2人で花火が見れること、星空が見れること、
きょもも嬉しいって思ってくれているなら
それだけで私も幸せだから
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作者名:ダイア | 作成日時:2022年10月19日 22時