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「有難う、わざわざ」
『ん』
今日も律儀に家まで送ってくれたきょも
“送る”なんて言葉は使わないけど、
当たり前のことのように私の家まで一緒に歩いてくれる
そんな優しさに、
少しは勘違いしてもいいのかな
なんて馬鹿なことを考えだしてしまう
中学生の時の話だってそう
覚えてるってだけであんなに優しい顔を浮かべるんだもん
『……』
エントランスに着いても
帰る素振りを見せずに壁にもたれているきょも
私もまだ離れ難くてそんな姿を見て見ぬふりをしていた
「…今年の七夕祭り、陽菜一緒に行ってくれるかな」
『あぁ、彼氏?』
「うん、男3人と私、とか傍から見たらヤバすぎない?」
『1人いないなら行かないんじゃねえの?』
確かに…、別に今年の七夕祭りも
一緒に行くって約束したわけではないじゃん
去年と同じように当たり前のように行くって勝手に思ってた
…じゃあきょもとのさっきの約束も、
必ずしも実現するってわけじゃ…
『…少なくとも俺は行くんだろうけど』
「…え?」
『さっき約束してしまったし、星見るって』
「きょも…」
『…なに』
面倒くさそうに、だけど少しニヤつきながら、
怪訝そうな顔で私を見つめるきょも
好きな人との約束があるって、こんなに幸せなんだっけ
「川、近くにあるとこにしてね」
『…星鏡?』
「うん」
“はいはい”ってダルそうに言いながら
壁から身体を離し、背を向けて歩きはじめた
その背中が愛おしくてたまらなかった
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作者名:ダイア | 作成日時:2022年10月19日 22時