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『大好きじゃん』
「…大好きだった、に決まってるじゃん」
過去形なんかじゃなくて、今も大好き、
いや、あの時以上に大好きかもしれない
本当はそう伝えてしまいたい気持ちを必死に隠す
慎太郎とも約束したもん、変に告白なんかしないって
それに今の彼の気持ちがわかんないから…怖い
『知らなかった』
「…え?」
『そんなの言ってくれたことなかったから』
そんなのお互い様だよ
きょもだって私に直接“好き”の2文字を
伝えてくれたことなかったじゃん
俯くきょもの姿にそんなことを思い出す
「…好きじゃないなら付き合わないよ」
『初対面だったのに?』
「それは、そう…だけど」
こうやって、きょもは昔の話だとしても
当時の気持ちを教えてはくれない
私があの頃、本当に大好きだったことは言わせたくせに
自分が私のことを本当に好きでいてくれたのかは言わないんだ
ズルいから。
だけど、過去のことだとしても
私にもそれを聞く勇気がないから結局同じことなんだと思う
きっといつまでも彼の本当の気持ちを知ることはできない
『返して』
「これ?」
私が持っているいわゆる短冊を指差すきょもだけど、
これってもともと私のだよね…?
『持ってたいから』
「…こんなの持ってても昔のことだよ?」
『いいの』
さっき取りだした財布の中に戻してポケットにしまいこんだ
その一連の流れで見せる表情がなんとも優しいもので、
3枚の短冊を大切そうに扱うから
そんなふうにする理由が私と一緒ならいいのに、なんて
叶うはずもないことを考えてしまう
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作者名:ダイア | 作成日時:2022年10月19日 22時