胡蝶の夢-2- (ページ40)

今日:31 hit、昨日:126 hit、合計:53,030 hit

90 ページ40

・

朝から頭痛が酷い日だった

目覚めれば窓の外は雨

この体調の悪さは自分の思いだとかそういうものではなくて気圧によるもので

『Aちゃん心配で来たよ～～』

仕切りのためのベッドを覆うカーテンを
勢いよく開けるのは誰かなんて、きっと眠ったままでもわかる

「授業は？」

『ん？サボった、慎太郎は授業優先してるけどね～』

「それが当たり前なの」

ウソ～、だなんて大して面白くもないのにケラケラ笑う田中くんは相変わらず

この適当な温度感がちょうどいいこともあるってわかったから
もう田中くんは嫌いじゃないし、まあだからと言って好きでもないけど

『あ、でもこの授業終わったらソッコー来るらし』

「そっか」

『あ、にやけてる、可愛い』

「うるさい」

『んは、でもAちゃん最近雰囲気良くなったよね、柔らかくなった』

どういう話のつながりで“でも”が出てくるのかわかんないし

その言い方だと今までの雰囲気が悪かったって言うことになる

…まあ、あながち間違いではないんだろうけど

身体を起き上がらすのが面倒で横になったまま、
彼の発言の意図をくみ取る

『前に言ってた“思ったより簡単だった”って言葉の意味
ずっと考えてもわかんなくてさ』

「…そんなこと言ったっけ」

『言ってたって！一週間くらい休んで学校来た時！』

「覚えてないや、てかこっち体調不良なんだから話しかけるのやめてよ」

記憶はしっかりある、

そして今でもその気持ちがあるからこうやって田中くんと話しているわけで

あの時、インフルだと勘違いしたクラスメイトが声掛けてくれたり
田中くんが声掛けてくれたり、

良い意味で人ってそんな複雑じゃなくて簡単なんだって

気になったから声を掛ける、それだけなんだって

それは上辺とかじゃなくてひとつの繋がりなんだってあの時感じた

もっと気楽に人と関わってもいいんだって

きっと、これはあのタイミングじゃなきゃ抱くことのできないものだった

そして、そんなふうに考えることができるようになった私にしてくれたのは、

・