胡蝶の夢-2- (ページ36)

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「え？」

『誰よりも優しくて、人一倍臆病で、本当は繊細で、
だから、そんなふうにぐるぐるいっぱい考えちゃうんだよね』

「……」

『どんな理由があれ、たった一人の母親なんだもん。
Aがそうやって不安に思う気持ちもおかしくないよ』

ポケットに手を突っ込んで隣を歩く森本くんを見る

私の視線に気付けば、ん？ってその大好きな口角がキュッと上がる

「…わかったようなこと言わないでよ」

ただの照れ隠し

私のこと、理解してくれて
考えも気持ちも一旦全部受け止めてくれる森本くんへの照れ隠し

だけどこれも全部彼にはお見通し

『そりゃAのことわかってるもーん！
誰よりAのこと見てるし、好きだし』

「…うるさいなあ」

『いざとなると恥ずかしがり屋なとこも知ってる』

思わず目を逸らしてしまった私を見て満足げに笑う森本くん

そして足を止めて、私と向き合う

『だから、大丈夫。何があっても俺が傍にいるし、守るし。』

「…あの人怒って本当に今日が最後になるかも、」

『そんなのさせない』

私の言葉を遮った森本くんの言葉は力強いもので

こんな不確定的なものでも信じたい、と思わせられるようなものだった

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