2―13 ページ29
·
ルーカスとユウゴが作った美味しい朝ごはんを食べ終え、今は五歳の子たちと遊んでいる。
ユウゴが担当したものは、少し焦げていたりしょっぱかったりと料理初心者感が凄かったのだが、前のダークマターのように食べれないわけではなかった。
私が美味しい、と言うと安心したように笑顔になってたのが可愛かった。
「Aー！ ボール取ってー！」
「ん？ ああ、私の木に引っかかっちゃったのか」
ちょっと待ってねと言い、手前の枝に足を掛ける。
ボールはいい感じにフィットしており、取るのに少し苦労した。
さわさわと葉が揺れる音がする。
それに目を閉じれば、「あったー？」と訊かれる。
慌てて立っていた枝を蹴って降り、はい、とボールを渡す。
「ありがとう！」
「いーえ」
パタパタと駆けていく元気な子達を見ながら、さっきの木の下に座り込む。
起きたばかりなのに、眠気がふわんとやってくる。
眠気を追い出すために、頭をブンブンと振る。
「あ、A」
重い瞼を擦りながら、声の聞こえた方へ向く。
そこには、青いノートを大事そうに持ち、私を心配そうに見ているレスリーがいた。
「A、眠いの？ 大丈夫？」
「あはは、大丈夫。ありがとね」
それでもまだ心配そうに見つめるレスリーに、そのノートは？ と尋ねる。
レスリーはハッとしたようにノートを背中に隠し、途端に顔が真っ赤になっていく。
それに首を傾げていれば、レスリーが上目遣いで「誰にも言わない？」と言ってきた。
もちろん、と返すと私の隣にトコトコとやってくる。
「これね、僕が作った曲の歌詞を書き込んでるんだ」
モジモジと、それでいて真っ直ぐな目でそう告げるレスリー。
そういえば、レスリーは歌がめちゃくちゃ上手なんだった。
所々破れているページをめくりながら、ふと気になったことを訊く。
「前に私に聴かせてくれた曲はあるの？」
私の言葉を聞いた途端、パッと顔を輝かせるレスリー。
年相応の笑顔が眩しい。
手馴れた手つきでパラパラとページをめくり、ここだよ、と指を指す。
そこには、聞いたことのある言葉がツラツラと書き込まれていた。
うん、前に聴いた曲の歌詞だ。
「ねえ、レスリー。これまた歌ってよ」
「えっ……うん！」
一瞬躊躇ったものの、可愛い笑顔で頷いてくれた。
木がさわさわと揺れる音に加え、レスリーの美声が木霊する。
やっぱりいい曲だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 186人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「愛され」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白狐(プロフ) - けんまおし1016さん» コメントありがとうございます！ 応援して下さり本当にありがたいです……！ いつ再開させるか分かりませんが、きっと(多分)また更新し始めると思うので気長にお待ちくださいませ……！ 面白いと思っていただき良かったです🥰 (2022年8月8日 20時) (
レス) id: 8c0c53f143 (このIDを非表示/違反報告)
けんまおし1016(プロフ) - 更新頑張ってください！とてもおもしろいです！ (2022年8月8日 7時) (レス) @page18 id: 92260459e9 (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - 夜桜桜愛さん» コメントありがとうございます！ ああっ、すみません！ 更新ストップさせちゃって……。今日か明日……もしくは来週……出来たら更新しますので。頑張ります！ (2021年9月19日 15時) (レス) id: 8c0c53f143 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜桜愛(プロフ) - 続きが楽しみです！頑張ってください！ (2021年9月19日 15時) (レス) id: 612a16ad5c (このIDを非表示/違反報告)
月狐(プロフ) - ありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです。まだまだ続く予定なので、応援していただけると幸いです！ (2021年6月12日 23時) (レス) id: 8c0c53f143 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紺 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/miitan11201/
作成日時：2021年2月6日 22時
