笑顔よ ページ5
洗濯物を持ち、干す部屋の場所へ移動していると誰かが縁側で座っていた
「…あの子は確か、般若?昨日安倍晴明といた妖怪だよね」
黄色いショートヘアに白い肌、黒が基調の服に背中に大きな鬼のお面を背負っている
何でだろう、横顔が悲しげに見える
ふと昨日夜叉から聞いた話を思い出した
親しいと思っていた存在の裏切り
…放っておけない気がしてきた
私は般若に近寄る、それに気がついたのか般若は私を見上げた
「隣、座るね」
般若の応答を聞かず、私は座って洗濯を横に置いた
「君は…」
「私はAよ。暗い顔をしてるけど、何か…あったの?」
すると、再び般若は下を俯く
「…僕は、復讐心に駆られて沢山の人間を殺しちゃったんだ」
般若の小さい声を打ち消すように、雨が地面を強く打つ音が途切れずに続く
「醜いのは人間の心の方だ、と。…それなのに僕がしてきたことは陰界のやつらとなにも変わらない。結局、僕の方が姿も…心も醜かったんだ」
般若は拳をぎゅっと握りしめた
話し終えたのと同時に、なぜか雨が弱まってきた
辺りは雨による音楽だけが、静かに流れる
屋根に伝って落ちてきた雫は地面に衝突すると、小さく四方八方へ飛び散った
「あなたの過去に何があったかなんて、私はよく知らない」
過去を振り返っても、何も変わらない
変えることができるのは、不確かな未来なんかより今この瞬間だけなのだから
「過去のあなたは過去のあなた。今のあなたは今この時でしか存在しない…過去とはもう、違うのだから」
上手く伝わっているかわからないが、教えてあげたい
「ここにはね、色んな過去を背負って今を生きている式神が沢山いるの。だからあなたを理解し、受け入れてくれるよ」
経験したから…味わったことのある苦しみがあるから、同じ立場にいる者の気持ちがなんとなくわかるはず
夜叉も座敷童子も
「沢山傷付けてしまったなら、その分沢山優しくすればいい。優しくされて….嫌な人なんて、いないから」
般若の黄色い瞳は揺らぎ、淵からは涙が溢れた
「うんっ…お姉さん、ありがとう…」
般若は口の端を少し上にあげた
何か、金魚姫を思い出した。あの子も泣いてたからなあ
般若とは少し、違ったけどね
私はそっと般若の頭を撫でた
するといつのまにか雨が止んでいたのか、空から光が射し込んできた
空を見上げると、雲で覆われていた太陽が顔を出し光り輝いていた
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翔子(プロフ) - 面白かったです!!続きが途切れていて少し残念でした。 (2020年7月18日 15時) (レス) id: 46d689b6ff (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 今更ながらの感想ですが、凄く面白いです^^*一日で全部読んでしまいましたヾ(*´∀`*) (2020年6月25日 7時) (レス) id: f3a30ae55a (このIDを非表示/違反報告)
神無(プロフ) - この作品を読まさせてもらいました!とても面白いと思いました!なので、更新頑張ってください! (2018年9月30日 16時) (レス) id: 3f0f44a8b4 (このIDを非表示/違反報告)
はぐはまさ - 桔梗さん» 有難きお言葉!満足頂けるよう頑張ります(*'▽'*) 虫取り網や枕を気で浮かせている茨木童子は見た目とのギャップでもう幸せですね…! (2018年8月16日 1時) (レス) id: c8fcfc89a6 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗 - 勿論!ずっと読み続けたいです!現在のロード画面も感動しました(*´-`) (2018年8月13日 0時) (レス) id: 8ba5b5b6c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はぐはまさ | 作成日時:2018年2月4日 1時