【陰陽師】女子高生と茨木童子 3

まだ安心感はない ページ20

「お待たせ！」


一声かけると、茨木童子は顔を横に目をこちらを見据えた



「では、もう寝るぞ」


そう言ってこの鬼は左手でポンポンッと布団を叩く



何だ？隣に来いと？



私は黙って茨木童子の隣に座ると、力強く引き寄せ
られそのまま布団に横にさせられた


…ちゃっかり左腕で腕枕してもらっちゃったわ


「ちょ、ちょっといきなり」


「夜の森を歩き続けたのだ。今日はもう寝たほうがいい」


右肩の下から肘までの二の腕部分が、私の体の上に置かれる


私のこと、気遣ってくれてる


1日の殆どを酒呑童子探しに明け暮れ、私と比べようのない運動量を毎日のようにしてるのに


…もう少し私のことより、自分のことを大事にしなさいよ


私は掛け布団を引き寄せ、茨木童子の肩にかけた


せめて私だけでも、この鬼を甘やかそう


額に生えた角が根をはるように、頰までのびた赤と橙色の硬い物質に触れる


壊さないように、傷つけないように


優しく手を動かし、撫でる


「いつもありがとう」


私の口から出た言葉に驚いたのか、この鬼の目が少しだけ見開かれた


そして目を閉じ、小さくため息をついた


「感謝されるようなことはしていない」


その言葉に、私は困ったように微笑んだ


出会った時から何も変わっていない


自分が優しいということを知らないのだ


「…右腕があれば、君をもっと満足させることができたのかと、最近思うのだ」


茨木童子は虚ろな目を、自分の二の腕に向けた


馬鹿だ、やっぱりこの鬼は馬鹿なのだ



私がどれだけ振り回されているのか


あなたの言動だけで物凄く心が掻き乱されるのか


あなたが私にありったけの幸せな気持ちを味わせてくれているのか


茨木童子だからこそ、私は隣にいることを


何も知らないのだ


「左腕だけでもこんなに愛されてるのに右腕もあったら私、贅沢者だわ」


私は頰から手を離し、背中に腕を回し抱き締めた


そしてこの鬼の胸板に顔を埋める


いつも分厚い装備をしていたから、薄い着物の上からだとたくましさがわかるわ…


茨木童子の少し速い鼓動が私の体に伝わってきた


「ふっ。…ゆっくり休め、A」


「うん、おやすみ」


返事をすると、頭の上にキスを落とされた


触れられたところが熱くなってくる


…寝れるか馬鹿！！！


ただでさえドキドキして寝れないのにっ


とりあえず目を瞑ってみたが、案の定眠りにつくまで時間がかかった

作者から重要なお知らせ→←アプリの方ではもう1周年だ。過ぎたけど

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