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82皿目 ページ40

*



「工っ! はい、ドリンク!」



私は頬を伝う汗を拭った。
少し視線をずらせば、爽やかな笑顔で部員にドリンクを手渡す、小鳥遊さんの姿が。



いわく、小鳥遊さんがいない間はしなかっただけで、本来、休憩時間になったらドリンクは部員に手渡す必要があるらしい。



今までは、せっせと床をモップで拭いたり、ボールの汗を軽く拭いたり、体育館を換気したり……。



「じゃあそれは今まで通りみんながやって? 私がドリンク渡すから」



なるほど、と私は思ってしまった。
私は最初、小鳥遊さんが来たから、仕事の効率が上がると考えていた。
けど、それはどうも違うらしい。小鳥遊さんは、小鳥遊さん専用の新たな仕事を見つけ出すのが上手だ。



「駒米」



そんなことを考えていたら、練習中に、白布くんが唐突に話しかけてきた。
私はボール拾いの手を止め、首を傾げる。



『どうしたの?』



「テーピング巻いて」



私はそれを聞いてすぐに了承した。
指のテーピングは、自分では上手に巻けないので、白布くんはいつも私に頼んでくるのだ。
左手ならまだしも、右手の指に巻くのは大変な上時間もかかる。



救急セットを持ってきて、テーピングやハサミまで用意して、さぁいざテーピングを巻こう、としたところで、私は肩を突かれた。



「ねぇねぇ」



小鳥遊さんがふわふわ笑いながら、二階の窓のあたりを指さした。



『どうかしましたか?』



「二階にボールが上っちゃったの。取ってきてくれない?」



私は目をぱちくりさせた。
何で私に頼むんだろう。自分で行けば良いのに?
行けない理由でもあるのだろうか。



『ごめんなさい、先に白布くんにテーピング巻くの頼まれちゃってて』



「それなら私がやるよ! 代わりに、ボール取ってきて? ……私、二階に行くと虫の死骸とか落ちてて、耐えられないんだよね……」



小鳥遊さんが笑顔を崩さずそんなことを言った。
私は唖然とした。



私なら大丈夫だとでも言いたいのだろうか。
私だって、虫の亡骸を見て、嫌な気分にはなる。けれど、それも仕事の一環だからと、人に押し付けることなくやってきた。



返事のない私に構うことなく、小鳥遊さんは白布くんの方へと歩み寄っていく。
通り過ぎるとき、囁かな声で「ほら、早く行きなよ」と言われた。



こうなってしまったからには仕方がない。
私は、ボールを二階へ取りに行くため、体育倉庫の上りはしごへと走った。



*

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きりんりん(プロフ) - 道化師さん» ありがとうございます!!言葉選び……そこまでしっかり読んでくださってるのですか!!嬉しいです!!ありがとうございます!!( ;∀;) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
きりんりん(プロフ) - ねこ。さん» ただいま帰りました!ありがとうございます!!とても嬉しいです……これからも頑張ります……!!(TдT) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
きりんりん(プロフ) - 雪音さん» 無事帰ってこれました!ありがとうございます!これからもよろしくお願いします(*^^*) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
きりんりん(プロフ) - 彩夏さん» ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!(*´∀`) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ。 - お帰りなさい!!私はこの作品と作者様が大好きです!!自信を持ってこれからも頑張って下さい!! (2018年5月27日 12時) (レス) id: 8444393bfc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりんりん | 作成日時:2018年4月4日 23時

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