74皿目 ページ32
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牛島さんは傘もささずに私を探しに来てくれたらしい。
淡々とした口調で、事の経緯を話してくれた。
「キャンプ場に戻ったとき、駒米がいないと気が付き、最悪の事態が頭をよぎった」
牛島さんいわく、私はまだ肝試しルートのどこかで迷子になっていると、直感で感じたらしい。
『……さすがですね、牛島さんの直感』
「声も聞こえた。……駒米が叫ぶ声が聞こえた」
お腹を通じて牛島さんの声が身体に響いてくる。
私の前面に染み渡るぬくもりが、言葉なくともすべてを語ってくれる。
ごろろろ、と遠くで雷が鳴った。
私は軽く肩をすくめる。
「……怖いのか?」
面白がっているのか、それとも本当に心配しているのか、声質からは聞き取れそうにない淡々とした質問が投げかけられた。
私は見えないと分かっていても頷き、ぽつりぽつりと話し始めた。
『お父さんが死んじゃった日も、雷が鳴ってたの。……今でも思い出す。あの日、遠くから雷の音が響く中、床に倒れるお父さんを見つけたときのこと』
牛島さんは静かだった。
それが一番の優しさな気がした。
『……それ以来、雷が怖い。特に夜、雷が鳴ったら……眠れなくなっちゃうの』
最後は少し躊躇いながら言った。
自分で言っておいて、子供みたいで恥ずかしくなったからだ。
牛島さんはなおも、何も言わなかった。
けど、私をおぶる腕に、少しだけ力が込められたようには感じた。
実を言うと、多分もう一人で歩ける。
牛島さんはそれに気づいているのかいないのか。
牛島さんは、天然なのに時々すごく鋭いから、わからないや。
私達はそれから、とりとめもない話をした。
牛島さんが家に帰ったときの話も聞かせてくれた。
少ししたら、キャンプ場が見えてきた。
みんなが傘を片手に、心配そうに歩き回っているのがよくわかった。
白布くんがいち早く気が付き、他のみんなに声をかけつつ、走り寄ってきた。
「……駒米、大丈夫?」
白布くんもいつにもなく心配そうだった。
片手の傘を、私と牛島さんの上にあてがってくれる。
『心配かけてごめんね、大丈夫だよ』
他の人たちもわらわら近寄ってきた。
私は牛島さんの背中からおり、心配するみんなに、申し訳なく頭を下げつつ、心配してくれてありがとう、と心から言った。
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きりんりん(プロフ) - 道化師さん» ありがとうございます!!言葉選び……そこまでしっかり読んでくださってるのですか!!嬉しいです!!ありがとうございます!!( ;∀;) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
きりんりん(プロフ) - ねこ。さん» ただいま帰りました!ありがとうございます!!とても嬉しいです……これからも頑張ります……!!(TдT) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
きりんりん(プロフ) - 雪音さん» 無事帰ってこれました!ありがとうございます!これからもよろしくお願いします(*^^*) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
きりんりん(プロフ) - 彩夏さん» ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!(*´∀`) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ。 - お帰りなさい!!私はこの作品と作者様が大好きです!!自信を持ってこれからも頑張って下さい!! (2018年5月27日 12時) (レス) id: 8444393bfc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きりんりん | 作成日時:2018年4月4日 23時