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71皿目 ページ29

*



最初こそ、互いにコソコソ話をしていたけれど、奥に行くに連れて、だんだんと会話も減っていった。



ふと、生ぬるい風が頬をなでた。



『ひいっ…………』



私が喉が締まるような悲鳴を上げ、無意識にそばにある服の裾にしがみついた。



「……大丈夫か?」



服の主が声をかけた。
その低く心地よい響きに顔を上げると、すぐそばに牛島さんがいた。



驚いて、顔がかぁっと熱くなる。
怖さや恥ずかしさや、興奮や戦慄やなんやらで、頭がぐちゃぐちゃになる。



『……あ、え、あ、あの…………』



足が動かない。
たまらず立ち止まると、牛島さんが振り向いた。



どこか、どうしようもない居心地の悪さを感じて、私は咄嗟に嘘をついてしまった。



『……わ、私……ちょっと、忘れ物しちゃったので、も、戻ります!!』



牛島さんが送ろうかと提案してくれたけど、申し訳なさに断った。



そうして、一目散に来た道を戻った。



曲がりくねった道を抜け、流れる木々を横目に、我武者羅に歩き、走った。



___ハッと我に返ったとき、目の前には神社らしき建物があった。



あれれ、私、キャンプ場のほうに戻るはずだったのに……。



と、私の思考を邪魔するかのように、ぽつりぽつりと冷たいものが私の肩に降り落ちた。



『えっ、あ、雨?!』



雨はぽつりぽつりぽつぽつぽつ__と等間隔を詰め始め、ついには本降りにまで追い込んできた。



私は無駄ながら雨を避けるように屈み、仕方なく神社の屋根の下に避難することにした。



ざあざあという雨の音を聞きながら、私はうずくまり、ひたすら足元を見ていた。



こんな雨の中じゃあ、下手に動くのは危ない。
どんななかでも不思議なことに、私の頭は冷静だった。



が、私の冷静さを欠く、悪魔が襲来した。



瞬間、眩い光が私の目を貫く。



__ズドーーンッッ!!!



轟くような、空気を震わすような、猛獣の鳴き声のような。
悪魔、それは雷であった。



『………ひぃ……』



私は身体を縮こませた。
四肢が硬直し、指先が冷える。


 
誰か、誰か助けて。



*

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きりんりん(プロフ) - 道化師さん» ありがとうございます!!言葉選び……そこまでしっかり読んでくださってるのですか!!嬉しいです!!ありがとうございます!!( ;∀;) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
きりんりん(プロフ) - ねこ。さん» ただいま帰りました!ありがとうございます!!とても嬉しいです……これからも頑張ります……!!(TдT) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
きりんりん(プロフ) - 雪音さん» 無事帰ってこれました!ありがとうございます!これからもよろしくお願いします(*^^*) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
きりんりん(プロフ) - 彩夏さん» ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!(*´∀`) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ。 - お帰りなさい!!私はこの作品と作者様が大好きです!!自信を持ってこれからも頑張って下さい!! (2018年5月27日 12時) (レス) id: 8444393bfc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりんりん | 作成日時:2018年4月4日 23時

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