#好き ページ37
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幸せそうな表情で、彼女は言う。
「ーーー貴方に出会うことができた」
その目を、僕は以前から知っていた。
僕がAを見るときの目。
Aが僕を見るときの目。
それと、全く同じ。
「……………ごめん」
「知ってるよ、ずっと前から」
震えを振り払うように、ひとつ息を吐いた。
「僕は、Aが好きだ」
残酷な程に強く言い切る。
すると、彼女は自嘲気味に笑った。
「薄々勘付いてたの。二人の反応といい、美樹の態度といい、滑稽な程に分かりやすかったから」
「じゃあ、」
「でも信じたくなかった。だから炭治郎くんとの噂を流した。ごめん…でもやっと気付けたの」
彼女は、僕が今まで見てきた中で一番の綺麗な笑顔を向けた。
「私は、Aに恋する君に恋した」
「ありがとう」
「ずっと応援してるから」
目の淵に溜まった雫が、止め留めなく溢れては頬を伝って流れていく。
ポタリ、地面に落ち切ったところで彼女は紛らわすように話を続けた。
「無一郎くんが協力してくれたお陰で、アイツはご乱心。ボロを出したところで婚約は破棄させる。抜かりはない」
「…黒蜜さん、」
「今夜限りでこの関係は終わり。だから無一郎くん、Aのことよろしくね!」
「え?」
まるでもう自分は関わらないとでも言いたげな、その台詞に僕の息は一瞬詰まる。
「きっと私が傍にいても傷つけるだけだし、それにアイツが危害を加えるかもしれないから」
「それだと黒蜜さんが…!」
いいんだよ、と首を振られる。
全然良くない。
これじゃあ黒蜜さんがAの二の舞だ。
だが、否定しようと発した声は彼女の耳に入ることはなかった。
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ーー他の声に遮られて。
「ふざけんなッ…!」
襖を勢い良く開けて、怒気を含んだ声で彼女は怒った。
その姿に、僕も黒蜜さんも驚いて目を丸くする。
「Aっ…!?」
「なんで、」
「最初から聞いてた。けど、もう我慢できない」
ズンズンと歩を進め、黒蜜さんの目の前にそびえ立つ。
次の瞬間、パチンという乾いた音が部屋の中に響き渡った。
「……目を覚ましてよ」
そう言い終わったAの瞳は、何処か哀しみを帯びていた。
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Runa - 紅乱さん» 一気読みだなんて!めちゃくちゃ嬉しいです!杏香をそのように言ってもらえありがとうございます!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 永久さん» 最後までお読み頂きありがとうございます!!貴方様のコメントで泣きます!!!!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう本当に!!泣きます!!!!! (2020年1月17日 17時) (レス) id: 75d8805815 (このIDを非表示/違反報告)
紅乱 - 今日見つけて一気読みしてしまいました!杏香ちゃん良い子すぎて泣ける…… (2020年1月16日 21時) (レス) id: 649e22ca45 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 雫さん» それなあああです!!こんな親友私もめちゃ憧れます! (2020年1月16日 18時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Runa | 作成日時:2019年12月5日 23時