#ボロ ページ34
.
.
「じゃあ、任せるよ？」
「うん」
それを合図に、私たちは一斉に駆け出した。
迫り来る腕や足を軽々と避け、一気に鬼との間合いを詰め頸を斬る。
…うお、半分でもいけた。
「美味ソウダナァ…！」
「た、すけて……」
今にも女の人を喰おうとする鬼を斬り、私は隅に縮こまる彼女の顔を覗き込んだ。
ぱちぱち、と綺麗な二重が瞬いた後、その目の淵に涙が浮かんでくる。
「ありがとう…っ！本当にありがとう…！！」
「もう大丈夫ですよ。私たちが残った鬼を斬ってくるので、ここに隠れていてください」
「ええ」
女の人に私が着ていた羽織を掛け、無一郎の方を確認する。
だが、もうそこに彼の姿は無く、斬られた鬼の体が塵となって消えていた。
残った鬼は…数匹。
無一郎ならすぐに片を付ける。
私の仕事は、残った住民の保護だ。
####
「本当にありがとうございます…！」
「いえ、私がもっと早くに来ていれば被害は減らせたので…、不甲斐ないばかりです」
その後、十数人の住民を保護し、私は彼らから襲撃時の様子を詳しく聞かせてもらった。
恐らくこの周辺の鬼はほぼ消滅しただろうから、少しだけ復興の手伝いをして帰ることに。
「じゃあ、私たちはこれで失礼します」
「ああ、気を付けてな」
…ともかく、全滅じゃなくてよかった……
無一郎の少し後ろを歩くと、彼は村が見えなくなったところでこちらを振り返った。
おいで、と手招きされ遠慮がちに隣に並ぶと彼はまたゆっくり歩き出す。
「何匹斬ったの？」
「…60くらいかな、大体」
「うわ、だからそんな血塗れなんだね」
懐かしい。
このゆったりとしたテンポの会話。
大好き
今の彼と隣に立って話すのは、私ではない。
その事実が私を苦しめる。
前の関係を壊したのは、私自身だというのに。
「Aはさ、」
皮肉なものだ。
「嘘を吐くのが上手だよね」
「、え」
そう、無一郎は目を細めた。
この言葉には見覚えがある。
前にしのぶさんに言われたことだ。
「周りをよく見て、空気を作るのが上手い。けど、ピンチになったらボロを出す」
「ボロって…、」
どこでバレた？
何がバレた？
そう焦る反面、彼の答えに期待する自分がいる。
「僕のこと、無一郎って呼んだ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 260人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Runa - 紅乱さん» 一気読みだなんて！めちゃくちゃ嬉しいです！杏香をそのように言ってもらえありがとうございます！！ (2020年1月18日 11時) (
レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 永久さん» 最後までお読み頂きありがとうございます！！貴方様のコメントで泣きます！！！！！ (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - 完結おめでとうございます！！もう本当に！！泣きます！！！！！ (2020年1月17日 17時) (レス) id: 75d8805815 (このIDを非表示/違反報告)
紅乱 - 今日見つけて一気読みしてしまいました！杏香ちゃん良い子すぎて泣ける…… (2020年1月16日 21時) (レス) id: 649e22ca45 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 雫さん» それなあああです！！こんな親友私もめちゃ憧れます！ (2020年1月16日 18時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Runa | 作成日時：2019年12月5日 23時
