#おはぎ ページ28
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「………大丈夫か?」
ずっと無言で箸を動かす私に何を思ったのか、冨岡さんはそう話しかけてきた。
「ええっと…」
「腹でも下したのか?」
「いや、そういうわけでは…」
驚いた。
彼は誰ともツルまず、てっきり人に無関心なものかと思っていたからだ。
すると、冨岡さんは困惑する私に懐から美味しそうなおはぎを取り出す。
「さっき貰ったものだが…食べるか?」
「えっ」
この澄んだ瞳で見つめられては、断るものも断れない。
一体何を考えているんだ…??
というか、おはぎを取り出してからビシバシ感じる不死川さんの視線が痛い。痛すぎる。
「じゃあ、頂きます…?」
パクッと一口食べると、程よい甘みが口内に広がった。
「…俺は恋愛には疎い」
「へ、へえ?」
「だけど俺にも分かることはある」
ゴクリ、唾を飲み込む。
「時透は、黒蜜のことを好いていない」
……エ???
意味が分からず冨岡さんを見ると、彼は少し得意げな表情をした。
アッこれ自分の世界に入ってやがる。
「じゃあ何で付き合うことに…」
「時透は気紛れな奴だからな。そういう時もある」
根拠にならない理由を言われた。
「鮭大根も食べたし、俺は帰る」
「折角来たんだから祝ってあげれば…」
「それだと時透は喜ばない」
とだけ言い、冨岡さんは部屋を出て行ってしまった。
そんな有無を言わせないオーラに圧倒されるも、私はそれが逆に勇気へと繋がる。
「ごめんなさい、私も抜けます」
「オイオイ、冨岡のおはぎに胃袋掴まれたかァ?テメェの親友よりも大事なことなのかよ」
不死川さんに止められ、口を開こうとすると伊黒さんの声に遮られた。
「それより梅宮。近頃お前に対する評価が荒れているが、実際はどうなんだ?お前は柱として任務を全うしているのか?」
「伊黒さん、それは…」
「信頼はしているが、こう何度も噂が立ってしまえば疑いもする」
その言葉を聞き、周りを見るとほとんどの人が私から顔を背ける。
「……信じるか信じないかは、皆さんにお任せします」
「梅宮、」
「口先で何を言っても響きませんよね?だから私は、実績でその噂を覆してみせます」
最後にチラリと杏香と視線を合わせ、私は屋敷を後にした。
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Runa - 紅乱さん» 一気読みだなんて!めちゃくちゃ嬉しいです!杏香をそのように言ってもらえありがとうございます!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 永久さん» 最後までお読み頂きありがとうございます!!貴方様のコメントで泣きます!!!!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう本当に!!泣きます!!!!! (2020年1月17日 17時) (レス) id: 75d8805815 (このIDを非表示/違反報告)
紅乱 - 今日見つけて一気読みしてしまいました!杏香ちゃん良い子すぎて泣ける…… (2020年1月16日 21時) (レス) id: 649e22ca45 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 雫さん» それなあああです!!こんな親友私もめちゃ憧れます! (2020年1月16日 18時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Runa | 作成日時:2019年12月5日 23時