#誤解 ページ30
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必死に唇を噛み締めて耐える私に、彼はおもむろに私の頭へと手を伸ばす。
だが、その手が触れることはなかった。
「カァーカァー!南南西二鬼ガ出現!梅宮Aハタダチニ出発セヨ!!」
「っあ…」
「!任務…?」
鎹烏の声に顔を上げると、炭治郎は我に返ったように私に微笑みを向ける。
「いってらっしゃい」
「…ふふ、なんか新妻みたいだね」
「なっ!?俺は歴とした男だ!」
あと一歩で出てきそうだった嗚咽を無理に抑え込み、私は息を吐く。
ニコッと笑顔を向けると、彼は少し不安そうな顔をした。
「………本当に、もう大丈夫なのか?」
「…、うん」
依然として心は晴れてはいない。
けど、炭治郎くんの言葉で救われた部分もある。
「ありがとう、貴方のおかげで頑張ろうと思えた」
「!」
「じゃあね、生きてたらまた会おう」
「ああ!次会った時はもっと強くなってるからな!」
その言葉に安堵を覚えながら、私は脚に力を込め走り出した。
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「ふぅ、やっぱ少し痛むな…」
ズキリと感じる痛みに少し顔を顰めるも、私は早めに任務を終え帰路についていた。
「アア!?要らねぇっつってんだろォ!?」
いきなり聞こえた怒声の主に凝視感を覚え、私はそっと民家を覗く。
すると、そこには野菜を持った子供と苛ついている不死川さんの姿があった。
「…何やってるんですか?」
「チッ、梅宮か。襲われてたこのガキを助けたら、礼とか言って野菜を押し付けられたんだよ」
「あのね、ぼくお兄ちゃんに助けてもらったの!だからね、これもらってほしくって」
嬉しそうに話し出す男の子に、不死川さんはキレたように舌打ちをする。
「こーんなに大っきいバケモノをね、ていっ!ってやっつけちゃって!カッコよかったんだ!」
「だァから要らねぇって!!」
不毛なやりとりだな…?
こんなに健気なんだから、野菜くらい貰ってあげればいいものをとチラリと思う。
だがそんな気持ちが伝わったのか、彼は怒ったように私に言った。
「生活に困ってるコイツから貰うわけにはいかねぇんだよ!」
よく見れば、男の子の服には所々穴が空いている。
「……私、不死川さんのこと誤解してました」
「は?」
風柱の新しい一面を発見してしまった。
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Runa - 紅乱さん» 一気読みだなんて!めちゃくちゃ嬉しいです!杏香をそのように言ってもらえありがとうございます!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 永久さん» 最後までお読み頂きありがとうございます!!貴方様のコメントで泣きます!!!!! (2020年1月18日 11時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
永久(プロフ) - 完結おめでとうございます!!もう本当に!!泣きます!!!!! (2020年1月17日 17時) (レス) id: 75d8805815 (このIDを非表示/違反報告)
紅乱 - 今日見つけて一気読みしてしまいました!杏香ちゃん良い子すぎて泣ける…… (2020年1月16日 21時) (レス) id: 649e22ca45 (このIDを非表示/違反報告)
Runa - 雫さん» それなあああです!!こんな親友私もめちゃ憧れます! (2020年1月16日 18時) (レス) id: e03723cf47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Runa | 作成日時:2019年12月5日 23時