◇マイペースなご主人様 (2018/01/29) ページ10
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ぬらちゃん」
その声の主は、私の
お仕えし始めてから何年経ったであろう……という些事はご主人様が本日もお元気でご機嫌麗しいのであれば記憶しておく必要もない。
ふわんと優しい声色と、醸し出す包み込むようなオーラから、本日はご機嫌であるという事が窺い知れて、私の口元もムズムズするというものです。
陽の光が明るく照らし、ポカポカの陽気がお昼寝にも丁度良く。
おそらく昼食後には日向で少しお休みになられるでしょうから、智様のお体を冷やさないようにブランケットでも用意しなければ……。
「おれ、釣りしたい」
「あ〜、明日なら行けるかもな」
盤の向こう……紺色の甚平を身に纏い、鼻の下と顎に生えた髭は不精を装い、煙管からゆらゆらと白い煙を立ち昇らせ、いつも少しつまらなそうな表情を携えていらっしゃる。
「ぬらちゃん」と呼ばれた御仁……は私も指導を頂いているその道では知らぬモノのいない御高名な『ぬらりひょん』様。
この御方を「ぬらちゃん」と呼べるのは、この世に智様だけ。
「あ、マジ？」
「マジマジ……海坊主が南の方に台風作りに行ってるからな、明後日以降は海も荒れる」
「え、そうなの？」
「あぁ、行くなら明日だな」
ぱちん。
盤の上で黒丸が音を鳴らし、智様が眉間に皺を寄せて唇を尖らせて、ぬらりひょん様……御館様の一手が痛手だったという事を教えてくれる。
「儂の勝ちだな」
「……まだ分かんねーし」
ぱちん。
盤の上で白丸が音を立て。
智様の口元がニヤリと上がって、御館様の眉がぴくりと動いたのを合図に、煙管から上がる煙がゆらりと揺れた。
「美嘉」
『はい智様、ここに』
「明日の気配は？」
『ごさいません……故に釣り日和かと』
ぱちん。
ぱちん。
盤で音が鳴る。
「じゃあ釣り船予約しといて」
『いつもの船で宜しいですか？』
「任せる」
『かしこまりました……で、智様』
「……んぁ？」
ぱちん。
ぱちん。
盤で白丸が躍る。
『何故、碁盤でオセロを』
「え……そんな気分？」
『……成程、失礼致しました』
「ははっ！理解に苦しむのは分かるぞ」
「ほれ、ぬらちゃん、おれの勝ち」
「……これはしてやられたな智に」
「明日の釣り、付き合ってね」
満足そうにふんわり微笑む智様。
私、本日も眼福でございます。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 921人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒衣(プロフ) - あいさん» そして、そうなのです〜。この作品ばかりは、かなり下書きを溜めて読み直して修正して…を繰り返しておりまして(汗) なので、彼らの続きもそのうち日の目を見ると良いな、と思っております！ありがとうです！(*'ω'*)♪ (2018年4月9日 0時) (
レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - あいさん» きっと下唇とアゴがちょこんと出てるハズです(笑) ソレで抱きつかれたら撫でるしかない…。大した事ない兄弟喧嘩みたいなワチャワチャを繰り広げてて欲しいという願望が(笑) そして潤くんハンバーグは最高に美味しいと思うのです(*'ω'*) (2018年4月9日 0時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - そして、ヒトマズコレマデなのですねー。この世界大好きで毎回楽しみにしてました〜。またいつか使い魔ちゃんやヒトではないモノたちが黒衣さんの頭に登場して想像を巡らせてほしいなぁ。いつかまた〜( ^_^)/~~~ (2018年4月6日 12時) (レス) id: cdabb1149e (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 智くん、素直になって〜！いじけてるのも可愛いけど(笑)大したことじゃないのに心理戦が繰り広げられてて面白いですね〜智くん、ハンバーグ食べられ…(笑)お潤のバーグ私も食べたいなぁ(こらっ) (2018年4月6日 12時) (レス) id: cdabb1149e (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - あいさん» 後ろからのっそりです、全体重をのっそりされます、何ならぺと〜っとくっつかれてます(こら) 末ズはなんだかんだ持ちつ持たれつな印象を最も抱いていて、そこが最大の攻撃力だと思ってます(笑) TVで見てても末ズの絡みカワイイですもんね♪ (2018年4月4日 1時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
