◇2 ページ11
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
……ぴくり。
頭頂部の毛が逆立つようなイヤな気配がして、サワサワと自分の表面全てを柔らかい羽根で撫でられているような感覚が襲う。
西の空に目を向ければ、一塊の灰色の雲が風に乗って流れていく。
それを認識しながらも、日向で昼寝を始めてしまった智様の、撫でる風にフワフワと揺れる髪を眺めながら、このまま傍に仕えていたいと後ろ髪を引かれる。
「美嘉、仕事だろう」
『……はい』
「智は儂が見ておいてやろう……手早く片を付けて戻ってこい」
『……はい、お願い致します』
姿勢を正し、床に指を付いて首を垂れ、御館様に礼をしてから智様の寝転がる部屋を後にし。
廊下を進みながら背に長く垂れる髪を一纏めにしてきつく結わい、智様が用意して下さった私の部屋に戻り、立て掛けてある大きな鎌を手に取りながら、気持ちを落ち着ける。
私は智様の使い魔。
「西美嘉」という『ヒト』としての名前を持ちながら、『ヒトではないモノ』をその体に宿し、智様の手足となり動く。
私の体に宿っている『ヒトでないモノ』……この世では『死神』と呼ばれるソレは、生者の悪念に呼応し死に誘う、言わば「この世から切り離す存在」だ。
分家も分家、末端の小さい家に『死神』を宿して生まれた私は、本家からも分家からも忌み嫌われ。
『死神』という未知の存在がこの世に存在してしまったから故か、実の両親にすら愛されず、世界から隔離されて育った。
閉じこもるように、息を殺すようにひっそりと生きてきた私に居場所をくれたのは、他でもない智様だった。
智様に手を引かれて新たな世界に踏み出した私に見えたのは、キラキラとしたカラフルな世界と、智様の隣にまるで友人かの様に寄り添う櫻井家と御三家の御子息達の仲睦まじさ。
そして『ヒト』でもあり『ヒトではないモノ』でもある私を迎え入れて下さった、『ヒト』よりも優しい『ヒトではないモノ』達。
私に「世界は美しい」と教えて下さった智様の為に……私は私の中に宿ったモノと共に生き、共に死ぬ。
手にしている大鎌は通常『ヒト』には見えないモノで、私と私の中に居るモノの能力を最大限に引き出す器。
大鎌は、『ヒト』から悪念を断ち切ることも出来れば、後戻りできない『ヒト』をこの世から断ち切ることも出来るシロモノ。
先程空に見た雲……。
出来れば前者である事を願いたい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 921人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒衣(プロフ) - あいさん» そして、そうなのです〜。この作品ばかりは、かなり下書きを溜めて読み直して修正して…を繰り返しておりまして(汗) なので、彼らの続きもそのうち日の目を見ると良いな、と思っております！ありがとうです！(*'ω'*)♪ (2018年4月9日 0時) (
レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - あいさん» きっと下唇とアゴがちょこんと出てるハズです(笑) ソレで抱きつかれたら撫でるしかない…。大した事ない兄弟喧嘩みたいなワチャワチャを繰り広げてて欲しいという願望が(笑) そして潤くんハンバーグは最高に美味しいと思うのです(*'ω'*) (2018年4月9日 0時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - そして、ヒトマズコレマデなのですねー。この世界大好きで毎回楽しみにしてました〜。またいつか使い魔ちゃんやヒトではないモノたちが黒衣さんの頭に登場して想像を巡らせてほしいなぁ。いつかまた〜( ^_^)/~~~ (2018年4月6日 12時) (レス) id: cdabb1149e (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 智くん、素直になって〜！いじけてるのも可愛いけど(笑)大したことじゃないのに心理戦が繰り広げられてて面白いですね〜智くん、ハンバーグ食べられ…(笑)お潤のバーグ私も食べたいなぁ(こらっ) (2018年4月6日 12時) (レス) id: cdabb1149e (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - あいさん» 後ろからのっそりです、全体重をのっそりされます、何ならぺと〜っとくっつかれてます(こら) 末ズはなんだかんだ持ちつ持たれつな印象を最も抱いていて、そこが最大の攻撃力だと思ってます(笑) TVで見てても末ズの絡みカワイイですもんね♪ (2018年4月4日 1時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
