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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「…………げ」
「え、ひどくない？」
特にショックも受けてなさそうなへらへらした微笑みを浮かべながら、大野先生は足音も立てずに階段を上ってきた。
「……こんな所に何の用ですか？」
「こっちのセリフだな、それ」
「折角誰も来ないと思ったのに……」
「それもこっちのセリフだな」
階段を一番上まで上がると、怠そうに伸びをして、首を左右に揺らしながらコキコキ小さな音を立てて。
帰んないの？とでも言わんばかりの目線をチラリと私に向けた。
「……ま、お前ならいっか」
パンツのポケットをごそごそしてから取り出したのは、１本の鍵で。
何度か瞬きをしながらそれを凝視していれば、んふふ……と小さく笑ってから、顔の前で人差し指を立てて。
しー……と、小さく息を吐いた。
「誰にも言うなよ」
カチャ……と差し込まれた鍵が反転すると、カチ……と鍵の開く音が聞こえて。
その音と一緒に、私の頭の引き出しから「屋上は立ち入り禁止」と強く言っていた教頭の顔が引き出されてきた。
「入れてやる代わりに、飛び降りたりとか止めてね……おれが叱られっから」
「……しませんよ」
「……そ？……ほい、どうぞ」
「……良いんですか」
「ぜってぇ言うなよ」
ギギギ……と音を鳴らした扉が開けば、そこから吹き抜けていった風が大野先生のカーディガンの裾を揺らして。
目の前を邪魔した髪に目を瞑った瞬間、通って行った風が、自分の体に纏わりついていた学校の空気を全て流していった気分になった。
相変わらず寝ぐせの付いた髪がふわ……と浮いて、大野先生は光の中に溶けてくみたいに足を進めて。
私はどうしてか……そんな先生に不安を感じて、急いで彼の背中を追いかけて外に出た。
どうしてだろう。
たった、それだけの事で。
高校に進学した時とは比べ物にならない程、新しい自分になったような気持ちになったんだ。
「…………っ」
薄暗い場所に暫く居たせいか、飛び出していった先の眩しさに、瞳がじわ……と水分の膜で滲んで。
ゆっくり瞼を開いた先に見えた景色は、毎日見ている筈の風景が違った角度から見えるだけでも新鮮で。
まるで……知らない場所に急に放り込まれたような……そんな気持ちになった事を、今でも鮮烈に覚えている。
◇9 (2017/05/05)→←◇7 (2017/05/03)
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すりおろし梨。(プロフ) - 何？ 大野先生 何？ (2021年9月7日 8時) (
レス) id: 2a65575bc9 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - のあさん» すぐ飛んできて下さったのですか！ありがとうございます！そして待っていて下さってありがとう。そう言って頂けてホッとします。楽しんで頂けるように頑張ります＆楽しんで頂けたら嬉しいです！ (2021年8月24日 3時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - aracick5963さん» コメントありがとうございます！一気読み、嬉しいです。こんなゆるゆる先生いたら懐いたのにな〜と思いながらカタカタしております(笑) そして黒大野先生をご所望なんですね(笑) 出るかどうかお約束出来ませんが楽しんで頂けたら嬉しいです。 (2021年8月24日 3時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - のりさん» と平静を装っておりますが。え！？のりさんじゃん！わーい！！覚えててくれたんだー！と、めっちゃ喜んでおりました(笑) このお話もお楽しみ頂けたら嬉しいです！ (2021年8月24日 3時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - のりさん» お久しぶりです！忘れてませんよ！こちらこそ忘れずにいて下さってありがとうです！私の拙いお話を喜んで下さって本当に嬉しいです。お待たせしてすみません。待って下さってありがとう┏〇)) (2021年8月24日 3時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
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