◇11 (2017/05/12) ページ11
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……器用なんですね」
「ん〜、どうなんだろうな」
「だって、器用じゃなきゃ、そんなちゃんとした物、作れないと思いますけど……」
「んはは……おめぇ、アレか？コレ、ひとつだけしか作ってねえと思ってねえか？」
寄り掛かっていた体を起こして、両膝の上に両肘をつくと、そのまま手を組んで、煙草を咥えたままチラリと顔だけを私の方に向けた。
その表情は、普段ボーっとしている大野先生じゃなくて……ただの年上の人……どうしてかそんな印象を持ってしまった。
「前にもいっぺえ作ってるっつうの……ちゃんと座れるようなヤツ作れるまで、どんだけの枝を犠牲にしたか……」
前歯で煙草を挟んだまま話すその口調は、どこか舌っ足らずで、普段から少し噛み癖みたいな話し方をする大野先生をさらに幼く感じさせているのに。
その話す表情や、話している時の仕草、悪戯っぽさを含んだ瞳は……自分に兄が居たら、こんな感じなのかな……なんて事を考えさせて。
「おれは器用なんかじゃねえよ……好きでやってたら上手くいった……コレが作れるようになった、ってだけ」
「……でも、すごい」
「お前にもそのうち見つかるんじゃねえの？周りの言葉なんて気にもならねえ位に頑張れること」
「……見つかり、ますかね？」
「んぁ？……知らね」
「……え」
「……あ？」
「そこは……『見つかるよ』って言って、相手を安心させる場面じゃないんですか？」
はぁ？って顔した私が、はぁ？って顔した大野先生を見て。
この大野先生の表情から察するに……
「なんでおれがそんなこと、言ってやんなきゃならねえんだよ」
「はぁ……やっぱり……」
「進路相談でもなければ進路指導でもねえ……しかも、やりたい事なんて自分で見つけてなんぼだろ？」
「そうですけど……」
「あのな、大人に夢見過ぎなんだよ……年上の奴らが全員、やりてぇコト見つけてる訳じゃねえんだ」
「…………」
「やりてえコトも見つけられずにいる奴も、見つけてもやれねえ奴だって山ほどいんだよ」
「…………」
「自分の道を……選べねえ奴だって、この世の中にはさ、山ほどいんだよ」
大野先生は眉間に皺を寄せて、どこか苦しそうにそう言うと。
挟んでた煙草から、ぽろっ……と灰が落ちて、風が向こうに運んで行った。
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すりおろし梨。(プロフ) - 何？ 大野先生 何？ (2021年9月7日 8時) (
レス) id: 2a65575bc9 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - のあさん» すぐ飛んできて下さったのですか！ありがとうございます！そして待っていて下さってありがとう。そう言って頂けてホッとします。楽しんで頂けるように頑張ります＆楽しんで頂けたら嬉しいです！ (2021年8月24日 3時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - aracick5963さん» コメントありがとうございます！一気読み、嬉しいです。こんなゆるゆる先生いたら懐いたのにな〜と思いながらカタカタしております(笑) そして黒大野先生をご所望なんですね(笑) 出るかどうかお約束出来ませんが楽しんで頂けたら嬉しいです。 (2021年8月24日 3時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - のりさん» と平静を装っておりますが。え！？のりさんじゃん！わーい！！覚えててくれたんだー！と、めっちゃ喜んでおりました(笑) このお話もお楽しみ頂けたら嬉しいです！ (2021年8月24日 3時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - のりさん» お久しぶりです！忘れてませんよ！こちらこそ忘れずにいて下さってありがとうです！私の拙いお話を喜んで下さって本当に嬉しいです。お待たせしてすみません。待って下さってありがとう┏〇)) (2021年8月24日 3時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
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