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◆SIDE-YOU◆
その絵を見た時、心臓を掴まれたような衝撃。
足が地面に張り付いたみたいに、その場から動けない。
息をするのも忘れてしまいそうな、その絵。
一面の青、蒼、藍。
ところどころに他の色も使われているけれど。
その絵に吸い込まれそう。
いろんな感情が胸を駆け巡る。
切ない。
悲しい。
哀しい。
愛しい。
安心と。
絶望と。
愛情と。
諦めと。
＜頭のスイッチ切れてんぞ＞
フンッ！と鼻を鳴らすような言葉に、はっとする。
おそらくダダ漏れになっていた自分の感情に、途端に恥ずかしさが込み上げ、顔の温度が上がる。
＜……Aちゃん？＞
≪……智くん？≫
＜見学終わったら美術室＞
≪そこにいるの？≫
＜ふふっ、待ってるから＞
言葉の感じから、翔くんの凄い愛の告白の時の、照れたように指で頬をポリポリとする智くんを思い出しながら、パタパタとスリッパを鳴らしながら見学の教室に向かった。
見学していても、さっきの絵が頭から離れなくて。
全然集中できない私に翔くんからの「口撃」が時々頭に飛んでくる。
心配してるって分かるけど、言葉のヒドさは直して欲しい…。
説明も見学も終わったところで、迷ってる私を智くんが誘導してくれて、小走りになりながら美術室に向かう。
ガラッと入口を開けると、キャンバスに向かう智くんがいた。
こっちを向くと、いつものふにゃっとした笑顔で迎えてくれて。
「あれ、おいらの」
そう言うと、少し俯いて、照れくさそうにクスクス笑う。
頭の中は「？」がたくさん。
智くんは表情から察したのか、堪え切れないといった感じでアハハと笑う。
＜頭のスイッチが切れる絵、
お前、初めて見た感じ？＞
フンッ！と鼻を鳴らすような言葉が、また頭の中に聴こえてくる。
私の頭をポンポンを優しく撫でながら、「芸大に行くの」と智くんは言った。
その後、智くんは無事に進学したし、翔くんは違う学校だけど、私は無事合格出来た。
翔くんが勉強を教えてくれたけど、それは…もぅ…スパルタで。
智くんは「おいら分かんねぇ」と放置だったけど。
入学した学校は、最初に感じた穏やかさそのままで。
怖い先輩も変な同級生も少なそうで。
穏やかに学校生活を送れそうな印象だった。
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