◇4 ページ40
◆SIDE-YOU◆
黒「今日の目的はアナタですよ」
目の前の人は翔くんに向かって、
そう言った。
…私じゃなく。
しかも、見覚えがある。
以前、一緒だったオトモダチだ。
＜A、智くんを呼べ。
智くんが来たらココから離れろ＞
頭の中に話しかけてくる翔くんは、オトモダチを見据えたまま厳しい顔をしている。
黒「翔様をお連れするようにと。
舞様がお待ちになっております。
勿論、修様もご一緒でございます」
「……………は？な、にを…」
黒「チカラがあるのは
ご自分だけとお思いで？」
その一瞬、翔くんに隙ができたのを見逃さず、黒ずくめはニヤリと微笑むと。
瞳は水色に揺らめき、私に右手を払う。
シュッ！
それは、つららの様な。
何本もの、氷の剣。
それが私に向かって飛んでくるのを認識して、咄嗟に目を瞑る。
ゴオッ！
恐る恐る目を開けると、氷の剣が私に届く前に、炎の壁が目の前に立ちはだかっていた。
ううん。
正確には、炎を背負った翔くんが、私の前で両手を広げて立っていた。
以前、和也を止めようとした時みたいに、足元から孔雀の羽のように炎が広がっている。
黒「………ほぅ、素晴らしい！
リミッターを外さずその力とは！」
黒ずくめは本当に素晴らしいと思っているのだろう。
翔くんを見る瞳がキラキラして、その光には尊敬が含まれているように感じる。
「………おいお前、
目的は俺だって言ってたよなぁ…」
低い、怖さも含んだ声。
そう言うと、翔くんは少し俯いたまま、私を背中に隠すような姿勢に変える。
「何してくれてんだ、てめぇ………」
翔くんは眼鏡を外し、
瞳が、紅くゆらっと揺れる。
眉をひそめ、少し細められた瞳は、みるみる真紅に染まっていく。
その刹那、茶色のさらさらの髪がふわりと揺れ、背負った孔雀の羽をした炎が形を変え始めた。
マズイ…。
「覚悟は出来てんだろうなぁ…」
翔くんの発する熱風で、さらさらの髪がふわりと舞い上がり、相手を睨みつける真紅の瞳には全くブレがない。
背負った炎は形を変え、翼のような、翻ったマントのような、翔くんを包む鎧のような…。
いつだか、施設のオトナが言ってた。
『翔は【戦神】だよ』
そんな言葉を思い出した…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 71人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
